マルファン症候群 患者と家族の会 マルファンネットワークジャパン
治療と管理 マルファン症候群の治療と管理
 マルファン症候群は全身の結合組織に症状のあらわれる疾患であることから、根本的な治療法はありません。定期的に症状の現れる可能性のある臓器や全身の診察を行い、症状の早期発見を行って症状に対する治療を行うことが原則となります。特に心臓や血管系の症状は生命lこも関わる重篤なものも含まれますので、心エコー検査をはじめとする心臓血管系の評価を定期的に受けることが必須となります。

 血圧の急激な上昇により大動脈の拡張や解離を招くことがあるため、格闘技はもちろんのこと体の衝突を伴うようなスポーツや、重い荷物を持ち上げるなどの力む運動は避ける必要があります。妊娠は可能ですが、妊娠中から分娩にいたるまで産科医師や循環器科医師を中心に注意深く管理してもらう必要があります。

 大動脈基部の拡張傾向が認められる患者さんには、ベータ・ブロッカーなどの降圧薬やアンジオテンシンH受容体ブ口ツ力ーなどが用いられます。大動脈弁閉鎖不全が進行した例では外科的治療が行われます。とれには、べントール(Bentall) 手術などの大動脈弁置換術(大動脈弁を人士弁に置き換える手術)や自己弁温存手術(人工弁を用いない手術)などがあります。また、大動脈癌や大動脈解離に対しては、人工血管を用いた手術が行われます。

 心臓や血管系の症状のほかに、眼科学的症状や歯科・口腔外科学的症状、整形外科学的症状に関しても、定期的な評価が必要となります。歯科矯正については、マルファン症候群は保険適応疾患となっていますので、先天性疾患の矯正治療施設の認定を受けている医療機関であれば健康保険を用いて治療を受けることが出来ます。脊柱膏曲も成長期は進行性ですが、早期より治療を開始することにより、進行を緩徐lこすることや矯正が可能です。

 小児期から目立つ高身長により、いじめの対象となる児も特に女児の場合は少なくなく、心理的フォローも欠かせません。女児に対して、女性ホルモンを投与することにより身長増加をコントロールする治療も一部で実施されています。 また、高身長であることから、大動脈基部拡大などの症状の発現する前の若年期から、臨床診断を受けることなくバスケットポールやバレーボールの選手として活動している場合もあります。両親の身長に比べて明らかに高身長な小児に対しては、中学校や高等学校などでの本格的な運動部活動に入る前の時期にマルファン症候群を疑って診療を行い、マルファン症候群が疑わしいと判断された場合には、心臓や血管系の評価を行った上で日常の運動の強度の制限を含めた適切な生活指導を行うことが、本人のQOLを維持し高めるためにも重要になります。

 両親の一方がマルファン症候群である場合には、子どもがマルファン症候群である可能性が50%ありますので、マルファン症候群の症状の有無がある程度明確となる思春期頃までは、たとえマルファン症候群の症状に乏しくても、定期的に診察・検査を行うことも重要と考えます。マルファン症候群の管理・治療は単独診療科で行うことは困難ですので、遺伝子診療部門などが中心となってさまざまな関連診療科が関わって診療を行う(集学的診療体制)ことが望まれます。

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