マルファン症候群 患者と家族の会 マルファンネットワークジャパン
遺伝 マルファン症候群と遺伝
マルファン症候群は、疾患をもっている人から、1/2(50%)の確率で疾患の原因となる遺伝子を子どもへ伝える可能性がある常染色体優性遺伝形式をとる疾患です。この遺伝性であるということは、様々な心理社会的な影響があり、また医学的にも重要な事項で、遺伝カウンセリングの場で、しばしば話し合われます。

 遺伝に関する課題としては、疾患をもつ本人の立場では、同じ疾患をもつ子どもを授かる可能性のこと、女性の場合は、妊娠や出産の身体への影響などがあります。子どもがある場合、その子が疾患をもっているかどうかの不安、遺伝子を伝えることの自責の気持ちなどあります。子どもが自分と同じ疾患を有している時には、疾患を持つ先輩として擁護者であり援助できるという自信や安心と、同時に自分と同じような経験をすることへの不安や恐れという両価的な気持ちを有する可能性があります。また、いつ子どもに伝えるか、さらに周囲に話すかという開示についても課題や心配になります。これらの遺伝に関しては、家系内に同じマルファン症候群をもつ家族がいない突発性(孤発性)の場合と、家族性の場合とでは異なりますが、遺伝カウンセリングの場では、必要に応じての情報提供を行いながら、話を受け止め傾聴します。

 近年、アメリカ臨床遺伝・ゲノム学会が、網羅的な遺伝学的検査を医療の場でおこなった場合のガイドラインを発表しました。網羅的遺伝学的検査とは、原因のわからない未診断の疾患などのある人を対象に、特定の遺伝子を調べるのではなく、全ての遺伝子を調べる検査(全エクソーム検査、全ゲノム検査)です。このガイドラインにおいては、例えば、原因不明の肝臓の病気のある子どもに、その原因を調べるために網羅的な遺伝子の検査をした場合、いくつもの遺伝子を調べますので、マルファン症候群の原因となる遺伝子変化が見いだされる場合があります。推奨では、その場合、その結果を返却すべきとしています。これは、治療法や対応法のない遺伝性の疾患とは異なり、マルファン症候群とわかっていれば、有効な治療法や健康管理があり命や健康に対応可能(actionable)であると考えられているからです。肝臓の病気で調べたがマルファン症候群を有していることがわかる、即ち、想定していなかった所見がわかることから偶発的所見と呼ばれます。この推奨では、予想していなかった意外な結果であっても、その本人と家族の命を救うために、マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群や家族性胸部大動脈解離など24の疾患の返却を推奨しています。

 「遺伝」という事実は個人や家系、次世代へもいろいろな心理社会的な影響を与える可能性があり、ある意味、ピンチの状況です。しかし、上の推奨にあるように、前もって知っていれば、その人の命を救い病気を最小限にすることの出来る可能性があります。従って、「遺伝」に関しての遺伝カウンセリングの大切な考え方として、子どもや親、きょうだいという家系全体の健康管理を目指すという視点があります。ピンチをチャンスにかえるということです。遺伝カウンセリングの場では、それぞれの家系の様子を聞き、家系図を作成し、疾患をもつ可能性の有無を明らかにします。そして、その後の開示や診断、検査、受診などについて、どのように進めてゆくか、話し合いを通じて、一緒に決めてゆくことになります。

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