マルファン ネットワーク ジャパン
突然やってくる大動脈瘤破裂と大動脈解離
─正しい知識と対策─



MNJの活動をご紹介してまいりましたが、最後に会が取り組むべき課題についてお話ししたいと思います。

1、早期診断のための体制作り
マルファン症候群は日本に限らず、決して知名度の高い疾患ではありません。医療専門家の間でさえ良く知られているとは云いがたいのです。けれども、早期に診断され、定期的な検診と注意深い観察を受け続けることで、その後の人生をマルファンと共生できるものにすることができるのです。早期に診断されることによって、高身長を生かしたバスケットやバレーボールなどのスポーツを途中であきらめなくてはならないつらい選択を避けることができ、将来体に負担のかからない職業選択をすることも可能です。早期の診断の機会が増えるよう、各関係機関に働きかけて行きたいと思います。
2、総合的な診察を受けるための体制作り
マルファンの診療科目は循環器、心臓血管外科、呼吸器、整形外科、眼科、と多岐にわたります。一人の患者があちこちして、そのたびに最初から同じ説明を繰り返すのではなく、マルファンクリニックで総合的な診療を受けることができたらというのが多くの会員の共通した願いです。東大病院には、去年の春マルファン外来がスタートしましたが、これは大きな第一歩だと思います。各診療科が横のつながりを持って、ひとりの患者を総合的に見ていただけることを望みます。
3、社会的、心理的側面の支援体制作り
「今、症状がないのに破裂の危険があると言われ大きな手術と向き合わなくてはならない」このことは多くの会員が持つ悩みです。こんな時に力になれるのが、同じ経験をした仲間の励まし、情報です。今後ともいわゆるピアカウンセリング的な役割を会員同士が果たしてゆけるよう活動を続けたいと思っています。
また、この病気は75パーセントが遺伝、25パーセントが突然変異で発生すると言われていますが、50パーセントの確率で遺伝します。人生における決断での悩みは大きいのです。特に若い女性に妊娠・出産に関わる危険性や遺伝の可能性を話すには専門の知識を持った上での配慮が欲しいのです。妊娠しながら、あきらめざるを得なかった女性がいます。専門家に解決法や答えを求めているのではなく、正しい知識と共に、遺伝カウンセラーによる精神的サポートによって、答えを出す手助けをお願いしたいと思うのです。

周知活動を進める一方で問題になるのが、患者の権利です。会にはマルファン症候群を取り上げたいという問い合わせがメディアから時々あります。そのたびに侃々諤々、賛否両論が出ます。それは、多くの会員が子ども時代にその身体的特徴から、何らかのいじめを経験しています。マルファンのことを知ってもらいたい、正しく理解してもらいたいと願うと同時に、そっとしておいて欲しい、子どもへのいじめにつながるのではと懸念する人が多いのが事実です。私は自分のあだ名オリーブが大嫌いでした。骨格の強制のために装具をつけている子ども、運動制限を受けているこども、これらのことを本人や周囲に理解させるのが難しいという事実もあります。また、優先席に座るのに気が引ける。力のいる重労働ができないので自分が怠け者のような気がするなど、外見からわからない人の場合、内部障害者としての悩みもあります。心理的、社会的な側面での支援の必要性は多種多様です。
いろいろお話ししてまいりましたが、私たちはこれからもこれらの課題一つずつに丁寧に、取り組んでゆきたいと思っています。そしてそのために医療関係者をはじめ、教育関係者、一般の方々の理解とご協力も是非あおぎたいと思っています。

マルファン症候群ひとつに限らず、障害を個性のひとつと受け入れられる、自分と違うものを受け止めることのできる広い心を持った社会が実現できたらすばらしいと思います。MNJの活動に参加することを通して私は、そのような社会を目指して、歩んでゆきたいと考えています。ご清聴有難うございました。


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