マルファン ネットワーク ジャパン
突然やってくる大動脈瘤破裂と大動脈解離
─正しい知識と対策─


外に向けての社会活動としては、さまざまな学会のときにブースをもらい、会の存在をアピールし、周知活動を行っています。この写真は2004年2月博多の心臓血管外科学会のものです。MNJのブースです。このとき、出席した会員が発言の機会を得て、「手術が必要とされる大動脈の径の基準はマルファンの患者の場合もっと、小さくあるべきではないか」と、基準とされる5センチより小さいまま解離した会員の例をとって、訴えました。

会でまとめた資料として、会員を対象に行った100項目以上にわたる質問と答えを載せたアンケート集、があります。作った当時2002年、会員は150名、アンケート回答者が113名でした。そこから一部、ご紹介します。マルファンと診断されたきっかけです。「解離や痛みなど緊急入院や手術」そして、「眼科の症状」もおおきなきっかけになっています。次に「最初、何科で診断されましたか」に対してですが、やはり循環器内科そして次に多いのが眼科です。10歳以下の場合、眼科の検査がきっかけで診断される子どもが多くいます。また、マルファンの身体的特徴に高身長がありますが、年代別の平均身長は20代男性187p、30代40代182p、50代180p、女性は20代30代が173〜4p、40代168p、50代165pです。次にこのグラフをご覧ください。マルファンの人は一般に痩せていると言われますが、必ずしもそうではなく、客観的なデータではありませんが、多くの人が自分が痩せている、あるいは痩せ気味であるとは思っていますが、それ以外の人が実際は30パーセントいます。次にご紹介するのは今日のテーマと関係のある解離についてです。マルファン患者に多く見られ、かつ最も致命的な疾患に解離性大動脈瘤がありますが、解離を経験した会員41名の回答です。そのうち、8名が二度の解離を経験しています。まず、痛みの箇所について、もちろん、解離した箇所にもよるのですが、背中の痛みと胸の奥あるいは胸の前面という答えが多く、次にそれはどんな痛みだったかを聞きました。
・突然襲ってくる痛み
・今までに経験したことのない激しい痛み
・引き裂かれるような痛み
・締めつけられるような痛み
・移動する痛み
・鋭い痛み
・徐々に迫ってくる痛み
・痛みで失神した
・痛みはなかったが、何か感覚があった
解離は激痛を伴い、意識を失うことが多いのですが、中には、我慢できる程度の場合もあり、そのまま見過ごしてしまっていることもあります。解離したとき、どう対応したかを聞きました。
・ 30分くらい我慢していたが痛みが激しくなり我慢できなかったので、救急車を呼んでもらった。
・ しばらく我慢していたが、救急車で病院に運ばれた。
・ ベッドの上で30分ほど我慢したが、119番に電話した。
・ 横になって救急車を呼んだ。
・ 家族に、病院に連れて行って欲しいと伝えた
・ やりかけの仕事を済ませ、自転車で帰宅した。
まず我慢して、少し待ったという対応がめだちますが、解離した時半数以上の人は自分がマルファンだとは知りませんでした。痛みが加速度的に増す種類のものであったとともに、解離をはじめて経験した場合、すぐに救急に駆けつけることに抵抗を持つことが多いようです。けれども、解離、破裂に対しては一刻も早く対応のできる、心臓欠陥外科や胸部外科などの手術設備のある医療機関に搬送されることが大切です。これはマルファンの患者に限りません。多くの親族を急性の解離によって失った経験を持つ会員さんが「キーワードは背中が痛い、気持ちが悪いのようです。何か変の感覚は大切です。とにかく病院へ行ってください後悔を残されないように」との声を寄せています。外出先で解離や破裂が起きた場合、特に、本人の意識がなくなった場合のためにMNJでは救命カードを作りました。二つ折りのスタンプカードのようなものです。カードには「大動脈が解離した恐れがあるので、救急で運んでください」と書いてあります。ただ、これをどうすばやく見つけてもらうかが難しいところです。いつも肌身離さず、紐を通して、首から下げているという会員もいます。スマートでわかりやすい方法は何かと、思案中です。アンケートは、マルファン症候群と一口に言っても、個人によって、その症状が実に多岐に渡り、その深刻さもさまざまに違うことを語っています。
昨年、MNJでは独立行政法人医療福祉機構から助成金を得て、マルファンの総合的なテキストとの評価をいただいた「マルファン症候群ガイドブック」と絵本「マービン」の二冊を作成しました。保健所や病院、各医療関係者にお送りしたあと、多くの問い合わせをいただき、千部増刷しました。内容は医療専門家の執筆による正しい医学知識の提供、この病気といかに向き合うかという心理面のこと、そして会員の生の声も紹介しています。絵本「マービン」は、原作はカナダですが、今回日本語に訳し、絵も会員が描きました。子どもの一人がマルファンだと診断され、それを受け止め、愛情を注ぐ両親の姿がさり気ないタッチで描かれています。自分の幼い頃を思って、涙が出たという会員もいました。絵本、ガイドブックともに近く増刷したいと思っています


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