マルファン ネットワーク ジャパン
マルファン症候群の診断はどうすればいいの?

マルファン症候群の診断は6つの主な症状(目、骨格、心臓血管、肺、皮膚、脊柱硬膜)の注意深い検査の後で、家族歴も踏まえ、幾つかの症状が同時に表れている場合、医師による総合的な判断の上で診断されます。また、それぞれの症状のなかでメジャーな症状とマイナーな症状が決められており(診断基準表)以下の症状数が判断基準になります。

家族歴のない方の場合:メジャーな症状が2つ、それ以外でマイナーかメジャーな症状が1つ以上ある場合
遺伝した家族の場合 :家族がマルファンと確定している場合、メジャーな症状が1つ、それら以外でマイナーかメジャーな症状が1つ以上ある場合

つまり、マルファン症候群のほとんどの人は、全ての徴候と症状を同時にあらわしてはいません。更にその時点であらわれていない症状も、将来的に出てくる可能性があります。そのため、「診断基準に適合しないのでマルファン症候群ではない、大丈夫。」と決めつける事はとても危険です。マルファン症候群の場合、確定診断されていれば当然ですが、疑い有りと言う場合も注意深い経過観察すなわち定期的な検診が必要です。

マルファン症候群と確定診断もしくは疑いありと言われた方は、心臓血管の症状の進行を知るために、最初の診断時の検査(超音波エコー検査、CTまたはMRI)のあとも、一定の期間ごとに 同等の検査を受けなければいけません。

1996年に改定された診断基準及び診断基準表はMNFに掲載されています。(DePaepe A,Devereux RB,Dietz HC,et al:Revised disgnostic criteria for the Marfan Syndrome. Am J Med Genet 62 : 417-426, 1996)
尚、以下の記載は1)Marfan Association UK 発行のFact sheet及び2)Takeshi Aoyama Hereditary Vascular Disorders:Marfan Syndrome Cardiovascular Med-Surg Vol.2 No.4 2000.11を参照しています。

主な検査

心臓血管検査:超音波エコー検査、CTまたはMRIなどを用い拡張、解離、弁の閉鎖不全の有無を調べます。心電図は適しません。

骨格検査:高身長、長い手足、長い指、柔らかい間接(体がかたいとは別)、骨のエックス線(主に胸と背中)検査などで側湾や胸骨の扁形(鳩胸、漏斗胸)などを調べます。

目の検査:近視等の検査の他、細隙灯顕微鏡を用い水晶体偏位などを調べます。

肺の検査:気胸経験の有無、ブラの有無を調べます。

皮膚の検査:皮膚線条などを調べます。

脊柱硬膜の検査:CTまたはMRIなどを用い脊柱硬膜の拡張を調べます。

注:最近マルファン症候群では脊柱硬膜の拡張(dural ectasia)が症例数の92%という高い割合で起こっている事が確認されました。注3)また18歳以下での症例においても12人中11人が拡張を認められるなど若年者の診断にも有用であるとが示されました。引用2)
注3)Fattori R , Nienaber CA, Descovich B, et al : Importance of dural ectasia in phenotypic assessment of Marfan's syndrome). Lancet 354 : 910-913,1999

家族歴:家族歴、遺伝子情報(下記参照)を調べます 。

遺伝の場合は五割の確率で遺伝しますので、家族にマルファン症候群の症状が現れている場合は、検査を受けると良いでしょう。(子供に症状が出ていない場合でも遺伝している可能性を否定する事が出来ません。継続的に検査すると良いでしょう。)
本人以外の家族に症状の現れていない場合は突然変異と考えられます。マルファン症候群患者の25%は突然変異と言われています。(突然変異の割合は25〜40%諸説あり。)

(以下はMarfan Association UK 発行のFact sheet参照)
最近、マルファン症候群になる変異の乗っている染色体や遺伝子、結合組織成分(フィブリリン)が同定されたことにより、マルファン症候群の診断に希望が持てるようになりました。フィブリリンについてもっと理解が深まれば、より早期に、より正確に、マルファン症候群の診断ができるようになることが期待されます。
血液や皮膚を診断のために臨床遺伝検査士に送って異常遺伝子を検出する検査が可能になってきました。マルファン症候群の特定の家族については、特にフィブリリン遺伝子の突然変異が分かっている家族については、いまや出生前診断も可能です。(※下記参照)


-------------------------------------------------------
※ 日本国内においては国立循環器病センターなどで診断可能ですが、担当の森崎先生によりますと「現時点では、すべての変異があきらかにされているわけではなく、典型的な Marfan でも変異は50%程度にしか見つからない。変異の見つかった症例では確診となるが、見つからなかったからといって否定できない。したがって、亜型に確診をつけるには不十分である可能性がかなりある。」との事です。
マルファンと診断された家族の、お子さんに遺伝しているか否かの診断には有力な手段となりますが、新たな患者さんがマルファン患者で有るか否かの診断には不十分であります。
またこの検査はルーチンワークとして実施されているものではなく研究段階のレベルと思われますので、実施依頼については時間的余裕を持って医療機関を通すように配慮して下さい。
また、アメリカの National Marfan Foudation の Diagnosing the Marfan Syndrome の最終項目、Using the Fibrillin Gene to Diagnose the Marfan Syndrome には、以下のような解説が掲載されています。
Fibrillin 遺伝子を使った Marfan 症候群の診断
科学者達は、Marfan 症候群の診断を助ける 2つの分子生物学方法を開発しました。
第一の方法はリンケージ解析と呼ばれ、fibrillin に対する異常遺伝子を同一家系内 で追跡するものです。第二の方法は突然変異解析と呼ばれるもので、 fibrillin 遺伝子上のわずかなな変化や変異が識別されます。どちらの方法も、その血縁者が、たとえ出生前であっても、Marfan 症候群の罹患リスクを負うか否かを、徴候または症状が現われる前に識別することができます。
しかし、これにも限界があります。まず、fibrillin におけるすべての突然変異が、Marfan 症候群を発症させるかどうかがまだ明らかではありません。多くの研究者は、その答えが「No」であると考えています。さらに、Marfan 症候群のすべての人に fibrillin の突然変異を見いだすのもまだ可能ではありません。
しかし、(発症を決定づける)なんらかの変異の存在を示唆する多くの証拠が存在します。
リンケージ解析は、意欲的に研究に協力してくれる罹患した血縁者が存在する場合にのみ、有用です。しかし、大多数の家族は、単に罹患者がすでに生存していないという理由から、この種の研究には不適切なのです(少なくとも 2人、望むべくは 4人の罹患血縁者が必要です)。その結果、Marfan 症候群の診断は、多くの症例において、依然として臨床診断によりなされているのです。

 

関連情報

マルファン症候群を検出するには
(知らないと恐いマルファン症候群より)

マルファン症候群を検出するための検診方法
(知らないと恐いマルファン症候群より)

わたしはマルファン症候群?
(医療アドバイザー Q & Aより)

・遺伝子診断できる施設は?
(医療アドバイザー Q & Aより)


マルファン症候群医療情報マルファン症候群の診断はどうすればいいの?