マルファン ネットワーク ジャパン
知らないと恐いマルファン症候群  

3.マルファン症候群を検出するには

 それでは,マルファン症候群を検出するにはどうすればいいのでしょうか?学校では入学時や,年度のはじめに健康診断を行います.実業団チームでは,シーズン開始時にmedical checkを行ったり,社内の健康診断を受けることもありま す.いずれもの場合も,一般に,健康診断は,胸部X線写真,安静時心電図,血液検査,尿検査,内科医による問診,聴診,触診等で構成されているのが普通です.果た して,この内容で十分といえるのでしょうか?

 ある大学の運動指導者を対象にアンケートを行った結果,この種の健康診断を行っていれば事故対策は万全であると答えた人が半数以上を占めました.さらに,運動指導者の中には健康診断の結果にはまったく目を通さず,健康管理センターや学生本人 任せである指導者や,結果の把握は必要ないと考えている指導者も30%〜50%も 認めました.すなわち,健康診断の結果には無関心であったのです.このことには, 2つのことが含まれています.ひとつは,日本人は伝統的に自分のことは最終的には自分で判断するという習慣があることです.もう一つは,運動指導者の不勉強です. 健康診断結果を見ても分からないから,見ても仕方がないという指導者が15%,結 果の入手方法がわからないという指導者が40%もいたのです.前者の習慣は仕方のないことだとしても,後者のことは今後改善の余地があるといえます.

 結論ですが,マルファン症候群を検出するには,一般の健康診断では不可能です. 心臓や血管の形態異常を検出する検査を受けないといけないのです.この検査は,心 エコー(超音波)検査といい,X線の被爆もなく,痛みもまったくない非侵襲性の検査です.この検査を受ければ,心臓の弁膜異常や,動脈血の逆流,心臓壁の厚み(心 筋症の検出),心室や心房中隔欠損等も検出可能です.さらに心臓専門医の診断を受 ければ,完ぺきでしょう.しかし,自覚症状を伴わない時には,この検査は健康保険の適応ではないので,自費検査ということになります.自費検査の場合,各病院が値段を決めているので全国一律ではありませんが,およそ1万から2万円の間でしょう .もちろん,心エコー検査だけの値段です.この検査料を高いと思うか,安全のための検査だから安いと判断するかは,個人個人の考え方だといえるでしょう.この心エコーは,何らかの自覚症状があり医師が必要であると認めれば,健康保険の適応となりますから,保険本人であれば2割負担,保険家族であれば3割負担ということになります.したがって,普段から色々と相談に乗ってくれるスポーツドクターがいれば ,経費負担を減らしていく方向で色々と考えてくれるはずです.ちなみに,私がチームドクターをしているチームでは自費診療の値段を病院側と交渉し,特別に安く設定 してもらい,チームや選手の負担を軽くしています.本原稿執筆時には検討中ですが ,ある団体に加盟している学生の検査枠を半額の検査料で確保し,心エコー検査の受診率を高めていこうという計画をたて加盟団体と調整中です.バスケットボールを愛するスポーツドクターであれば,スポーツの現場の方々の相談には快く乗ってくれることと思いますので,まずはそういうドクターを探すことから始めてみてはいかがで しょうか?

 今回は,マルファン症候群の検出には,一般の健康診断では不十分で,心エコー検査が必要であることをお話ししました.次回は,心エコー検査をいつごろから受ければいいのか,どのくらいの間隔で受ければいいのか等,具体的なマルファン症候群の管理方法についてお話ししたいと思います.

( 3 / 3 )
一つ前へ 



知らないと恐いマルファン症候群 > 第二回(3)