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知らないと恐いマルファン症候群  

2.マルファン症候群を検出するための検診方法

 マルファン症候群の特徴は,長身でやせていること,四肢,指が細長く,背骨が曲 がっていたり,漏斗胸を呈すること,極度の近視であること,常染色体優性遺伝という遺伝性疾患であること等が分かっています.以上をふまえて,検診を行います.

 アメリカの大学では,身長が男子で6フィート以上(およそ183cm以上),女子で5フィート10インチ以上(およそ178cm以上)で,表1の項目のうち2項目を含む選手は心エコー検査と水晶体検査を受けるようになっています.また,マルファン症候群の家族歴のある選手も,やはり心エコー検査と水晶体検査を受けるようになっています.マルファン症候群が遺伝性疾患であるからです.

 表1の6項目のうち,自分たちで出来るものについて解説しましょう.1)の聴診 は心臓専門医に任せるほかありません.2),3)の脊柱,胸郭の異常は,注意深く 観察すれば分かることです.4月号のイラストを参考にしてください.4)は,専門的には指極間長という項目です.起立した状態で,両手を鳥が翼を広げた時のように 開き,その時の手の中指の先から反対側の中指の先までを計測します.指極間長は, 身長と同じか短いのがふつうです.マルファン症候群では手足が長いので,指極間長が身長よりも長くなるわけです.5)は,簡単にいうと股下が,胴よりも長いかどう かの検査です.胴の方が長いのが普通です.6)われわれは,裸眼視力が0.3以下 をチェックとしています.

 身長に関していえば,われわれは男子で192cm以上,女子で178cm以上の選手に心エコー検査を勧めています.ちなみに,1997年度関東大学連盟に所属する192cm以上の男子選手は60名以上もいました.

JBLに所属する192cm以上の選手は,やはり60名以上もいました.身長によるふるい分けは,検査対象者を絞るうえで最も重要なことと思います.

 次に,いったい何歳くらいになったら心エコー検査を受けるべきなのでしょうか? 答えは,理想的には高校生からです.

 マルファン症候群若年者の突然死の原因である解離性大動脈瘤は,進行性の病変ですが,10歳以下で生じることは稀です.わが国では,16歳以上でみられ,40〜 50歳代に多いことが分かっています.したがって,心エコー検査は,高校生から受けることをお勧めするのです.最初の検査で見つからなくても,解離性大動脈瘤は徐々に進行するものですから,できれば1年後にも再検査を受けたほうがいいでしょう.

表1:マルファン症候群チェック項目

  1. 心雑音(注:心臓聴診検査での異常)
  2. 脊椎後側弯
  3. 前胸郭の変形
  4. 両側上腕間長が身長より長い(注:上肢が長い)
  5. 頭頂から恥骨結合までの距離と恥骨結合から足底までの距離の比が1より小さい (注:下肢が長い)
  6. 顕著な近視
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