マルファン ネットワーク ジャパン
第8回救急症例検証会 講演内容


「一人でも命を救えれば!情報は命を救う〜
                  救急隊への周知活動より」


3 救急活動や救急医療で知ってほしい事〜医療が抱える問題点

解離など緊急で患者が受け身の状態になった時、関わりがある周囲の人達の判断が非常に重要になる事はご理解頂けると思います。ここでは救急隊について考えられる問題を挙げます。
  1. 救急隊や救急医療の従事者がマルファンの正しい情報を持っているか?
  2. 適切な診断と状態の把握を素早く行なえるか?
  3. 適切な処置を行なうことができる施設に素早く運ぶ事ができるか?

まずはマルファンの特徴を知らなくては判断のしようがありません。昨今はマルファンと言う言葉だけではなく特徴についても知られるようになってきましたが、まだ十分とは言えません。早く周知される事を望みますがなかなか進んでいません。

また解離の診断において重要な症状の現れ方について、MNJが実施したアンケートでは当初思っていた以上に、多様である事が分かってきました。痛みを伴わない解離がある事も分かっています。ちなみにアメリカの救命カードには「解離についての適切な診断がなされなかった場合48時間以内に50%の患者が死亡します。お願いです!明確に大動脈解離の可能性が除外されるまでは解離の可能性を無視しないでください。」と明記され見落としの無いように注意を喚起しています。残念ながらアンケートでは、救急車で運ばれても解離を見抜けなかった例も多く報告されました。私の妻も解離を起こしたとき、神経痛と言う診断でした。運良くその時は亡くならずにすみましたが、去年の2月、大動脈基部の解離によって他界しました。33歳でした。当時は人工血管への置換手術の適応時期の目安になる拡張した大動脈の直径が50mmとされており、まだ47mmだったため近々手術を検討していましたが、間に合いませんでした。現在、妻の死を期に50mmから45mmに引き下げる検討がされています。
次に、解離と分かったとして、緊急手術など適切な処置が出来る施設に運べるかどうかが、生死を分ける事になります。救急隊の方に伺いますと診断のみならず、搬送先の病院を決定する上での幾つかの壁があるようです。


4 これからどうすれば良いか?〜問題解決のためにともに考える

そのような問題を解決するために当事者として社会への働きかけは非常に重要な意味を持ちます。特に解離など緊急の場合は判断の遅れが命取りになる事も考えられます。

救急医療の場合、まずは解離自体もしくは解離の可能性がある事を見逃さない、次に適切な処置を行なう。このための方法や体制が万全であるかを検証しなくてはなりません。社会活動などを通して、当事者の会としては周知活動を行っていますが、それだけではなかなか広まりません。社会で関わりのある皆さん、特に医療関係者の協力を得られないと専門知識を要求される場合、進められない事が多くあります。

また我々だけでは気がつかない方法があったり、横の繋がりがあったりとやはりその専門の力に負う事は多いです。

アメリカでは当事者の会と医療関係者、行政が手を組み、救急医療キャンペーンを実施しています。我々がそこまでするのは現状では大変かもしれませんが、可能性は否定していません。

この機会にマルファンについて認識をして頂き、一人でも命を救えれば!情報は命を救うと言う考えの元周知活動を続けて行きたいと思います。

最後に

マルファンの場合、生命の危機が突然襲って来てしまう可能性が高いため、患者側に生きる上での選択の余地を与えない事が考えられます。クオリティーオブライフは生きているからこそ考えられる事です。

もしなにかお気づきの点などありましたら、お教え願えると今後の活動に行かせると思いますので、何卒よろしくお願い致します。

MNJ 横関浩


救急隊への周知活動
古藤雅代マルファン基金



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