マルファン ネットワーク ジャパン
第8回救急症例検証会 講演内容


「一人でも命を救えれば!情報は命を救う〜
                  救急隊への周知活動より」


我々が考えている救急隊への周知活動についてご紹介させて頂きます。

今日、私がお話しする事は次の4点です。
  1. マルファン症候群についての簡単な説明
  2. マルファンと知る事の重要性。〜当事者が抱える問題点
  3. 救急活動や救急医療で知ってほしい事〜医療が抱える問題点
  4. これからどうすれば良いか?〜問題解決のためにともに考える

1 マルファン症候群についての簡単な説明

まず簡単にマルファン症候群についてご説明させて頂きます。マルファン症候群は、1/5000人の割合で発症すると言われており、美濃加茂市で10人、岐阜県で400人程の割合になります。全国では2万5千人程になります。身体の結合組織に影響する遺伝子の疾患で,骨格、肺、目、心臓や大動脈といった多くの器官に複合した症状が現れます。その現れ方は人により大きく異なります。

外的な特徴はやはり骨格で長い手足や指が特徴です。背が高いと言うのも一つの特徴ですが、背がそれほど高くない方も若干います。また痩せていると言うのもよく言われていますが、実際、交流会などで集まると太っている人も数割程度いるため、こちらも絶対とは言えません。このあたりに現実と情報の差があるかもしれません。

マルファン症候群患者の約75%が親からの遺伝によって生まれ、約25%は突然変異によって新たに生まれています。遺伝する確率は50%で、発症率に男女の差、地域の差はありません。

特に注意すべき点はマルファン症候群患者の大動脈は正常より太くもろいことがあり、血管にかかる圧力により、大動脈の拡大(瘤)、解離、破裂や、大動脈弁および僧坊弁の閉鎖不全など生命を脅かす重篤な症状が引き起こされてしまう危険があることです。

適切な治療や自己管理を行なわなかった場合マルファン症候群患者の平均死亡年齢は30代と言われており、MNJのアンケートでもそれが証明された形になっています。

次の表は会員の解離時と家族の死亡時の年齢と年代を表したものです。






2 マルファンと知る事の重要性。〜当事者が抱える問題点

マルファンと気がつかない場合、このような残念な数字になってしまいますが、早期に診断を行い、薬物治療と運動制限を組み合わせ、定期検診をし、症状によっては外科的手術を施すことにより、多くの場合、平均に近い寿命を全うすることができます。最も重要なのは、まずマルファンに気付き、正しい情報を知る事です。以前は平均寿命の短さと外科的治療の難しさから教える事をためらう医師も多かったようですが現在は手術の成功率も飛躍的に向上した点と、患者中心の医療への時代の流れによって、患者自身が生き方を選択出来る積極的な告知へと変わってきました。しかし、それでもこの病気に対する認知度は高いとは言えません。また症状が複合して現れる事と、人によってその現れ方に大きな違いがあるため、確定診断を難しくしています。

特に強く症状が現れない場合、ただの背が高い人として見られる事も多く、マルファンと知らずに暮らしている患者も多くいると考えています。そのような方は当人が知らない内に生命の危機が忍び寄っている訳ですが、その事実を知る術がありません。その生命の危機をいかにして守るか?正しい情報を知った人間の責任として浮かび上がってきました。

では、どうしたらマルファンと知らせることができるか?現実は解離してからマルファンと診断された例が多いです。しかし解離してしまうと死亡する確率も非常に高いものになります。家族がマルファンの場合、もしかしたら知る確率は高くなるかもしれません。では、突然変異によって「新たに」生まれた人たちはどうか?まわりに前例がいないのでMFと気づかずに、診断が遅れ、危険性が高くなる可能性があります。

解離などを起こして意識を失ってしまった場合、当事者としては非常に受け身の状況に置かれます。この時、最も大きな問題が目の前に広がります。




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