マルファン ネットワーク ジャパン
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東京大学医療政策人材養成講座 公開ワークショップ 
『患者発の医療改革』
〜患者の視点はどこまで医療政策に取り入れられるのか〜


3月13日 大阪国際会議場(グランキューブ大阪)

<活動事例報告1>
「私はこうして医療政策に働きかけた」
大久保通方さん(NPO法人日本移植者協議会理事長)


NPO日本移植者協議会、1991年発足。会員1600人。移植者、移植希望者及びその家族
会費個人4000円 団体10000円
フルタイム2人、パート1人、片手間ではやっていけない。活動資金2500万円でほとんど寄付に頼っている。人に会えば「お金・・」と言っていますよ。ひとつの勉強会にもスポンサーをつけて会場費だけ出してもらったりしています。

■発足の背景
昔は透析も、金の切れ目が命の切れ目だったが、保険適用、身体障害者として80年代に認定された。移植は腎臓しか行われない時代で、肝臓などは臓器移植法の制定が必要だった。
移植というのは移植の後も術後フォローが大変で就職、就学にもハンディキャップもあり、社会認知も必要であり、全国組織が必要だった。90年12月から準備会(当時800人)発足した。
社会的活動を嫌う会も多数存在。医者に嫌われた。
発足時の活動は、臓器移植法を制定しようと、関係機関に訴えるための、根拠が必要だった。
腎移植者の全国実態調査(2回目からは全臓器対象)移植医療の問題を500名から回答を得てまとめたりした。

■他団体との連携
臓器移植に関わる患者6団体が協力し、国会議員との懇談会を開催を要望。

■活動の成果と反省
初めは厚生省に電話しても、こなくていいと言われたが、組織をつくり、訴え続けることである。
数は力、継続は力、マスコミを有効に活用する。行政の壁は厚い、目に見える実績がなかなか上がらない。

■患者団体活動の問題点
他団体と連携し、数の力を増す。各団体とも人材不足に悩んでいる。
当事者として社会と向き合い訴える責任がある。
一部の団体を除き資金不足

実際に活動として、移植を受けた子供たちの作品展、勉強会、相談難窓口、提供者とのふれあいの日など。

<活動事例報告2>
「今、がん患者は何を動かそうとしているのか」
三浦捷一さん(がん患者大集会実行委員会代表)


日本人の約三分の一は国民病と言われる癌で亡くなっている。その多くの患者は十分納得の行く治療を受けたという実感がなく
最後には「他に治療法がありません」といわれ、路頭に迷う「がん難民」と化している。
がん難民に共通した最大問題は「情報」不足であり患者の不安、悩みの根源である。さらにがん患者がもっとも切望しているものは「生きる希望」であり、それを与えてくれる情報の欠如ががん患者を絶望に陥らせている。これらの問題を解決する第一の手段はがん患者が一致団結して声を出すことであり行政に対して「お願い」するのではなく、「提案」を主張することであると考える。具体的行動としてがん患者大集会の意義、経過につき話題を提供したい。
自分も5年前にガンを患い、不安と共に暮らしているが、飲みたい薬が飲めないのである、これは薬事法が原因である。

■がん治療改善のための活動を成功させるための柱
  1. 患者会
  2. マスコミ みんなに知ってもらわないと大きなものを動かすことは不可能である
  3. 政治家
  4. 医療関係者
  5. 法曹界 厚労省の薬事法を動かすものは憲法しかない 基本的なことをかえなくてはならない
  6. 製薬業界その他
今年5月28日にNHKホールでがん患者大集合 がん難民!そんな言葉をなくしたい!〜(4月1日参加受付開始)
すべての患者に必要なもの、それは「情報」である。 →日本がん情報センター(JCIC)の設立(→リンク)

<活動事例報告3>
「今、患者会がなすべきこと〜患者学会の設立を目指して」
石井政之さん(NPO法人ユニークフェイス理事長・当講座第1期生受講生)


99年に設立した、ユニークフェイスは7年目にはいるが、やはり人材の育成が急務であると痛感している。活動が広がるほど、人材がほしい。自分自身そだてる時間もスキルもない。
患者学会を設立し、医療政策のプロ(医師、看護師、厚生労働省、製薬企業、保険機関など)との交渉ができる次世代リーダーを育成、欧米に匹敵する質を伴った患者会の育成支援をしたい。

アメリカの予算規模、人的支援、の違いの調査報告はとんどない。
社会的にあまり情報がない。社会的なバリアがあり、欧米に匹敵する質をともなった患者会を育てることは無理。
患者会=ボランティアである、というところを根本的に考え直す必要がある。資金提供があり、給料をもらうようになっている、欧米では公的な援助が得られるシステムが多い。日本はまだまだ。

■日本の患者会状況
  • 同一疾患で多様な患者会がある
  • 患者が患者会を選択するための情報不足
  • 患者会の質の評価がない
  • 医療機関との連携が不足
  • 後継者不足、不在
  • マネジメントスキル不足
  • 患者会同士の情報交換不足
■患者学会のイメージ
  1. 本部は大学におく(インフラも整っている、教室もたくさんある。)
    官庁、病院、企業、宗教団体、政治団体からの中立
  2. 患者会の組織運営支援、設立の支援、NPO法人化の支援、会計処理の支援、マスコミ対応のノウハウ提供支援、資金調達の支援、人材育成の支援、機関誌のレベルアップの支援、会員の獲得方法の支援
■課題
  • 「患者」の定義をどうするか?
  • 運営資金は厚生労働省から?財団から?
  • 目的は研究か?運動か?患者による新ビジネスか? 他

<ディスカッション・患者会アピールタイム>

Q  遅れている患者会支援について
A  すでにクリアリングハウスというものは10箇所くらいあるが、社協がやっていたりして医療と連携がとれていない場合も多い。
必要な支援にはふたつの側面があるだろう。実際には、封筒詰め、発送作業ばっかりやっている患者会。結局はこれが大変でこの作業を効率化できるようにすること、また、人材育成や資金調達の支援。使いやすいNPO法案への改正が必要。

Q  日本文化にそもそも患者活動はなじむのか。
A  何人かから否定的な意見・・。

Q  具体的な育成方法とは?パートナーとなりえるには
A  患者学部をつくりたい。患者の心理、運営、NPOのこと、なぜ日本は寄付が集まらないか、新しいリーダーを育成をはかる、そのためにも患者学会の必要を感じる。ひとつの患者会がどれだけすばらしい活動をしても他団体に伝わらない。ノウハウを伝える方法が確立されない、その場が必要。

<他、パネリストのまとめ>
  • 医師が患者会を紹介しやすいために、評価されるかどうかの前に、会からの情報開示をもっとしていく必要がある。信頼を得ること。
  • 患者学会が東大に設立されることへの期待
  • 患者会が希望をもつために情報をもたらすシステム構築が急務
  • 自分たちの疾患の会からネットワークが大切
  • 患者会代表が一同に会する機会が必要。東大に期待している
  • レセプト開示など、各会が必要としていることを勝村さんに中医協に言ってもらうシステムができれば
  • 実際には封筒詰めに追われていたりするのが現状で、そういった側面もサポートを必要とするのは事実としてある・・・など

<患者会アピールタイム>
急遽、30秒ずつ、会のアピールをしてよいとの埴岡先生のはからいで、1型糖尿病、魚鱗せんの会、ストーマ(人工肛門)の患者会、腎性尿崩症の会、ユニークフェイスの会、など、20名くらいがマイクのところに並びました。みなさん30秒といわれているのに会や疾病の紹介を一生懸命・・というかどの人も機関銃のように(というかほとんど宮川花子)5分ずつくらい喋っていました。「お・・、大阪の人って早口やなぁ・・」と、大阪を離れて10年たつ私は心拍数あげながらドキドキ。

「マルファンネットワークジャパンという、マルファン症候群の当事者と家族の会で・・」というところでもう、何人もの人が、「あぁ、うんうん」という感じでこちらに深くうなづいてくれるではありませんか!これまでのみんなの活動で認知度がアップしたのでしょうか?うれしくなって調子づいた私は、負けずにマルファンの説明と、診断されていないことによって突然死が起こることを避けたいこと、そして助成金でガイドブックと絵本を発行できたこと、自慢してきました。

席に戻ると、ツツーと、うちのガイドブックを手に近づいてくる女性。「こんにちは!これ送っていただいて!」と、腎性尿崩症の会のスタッフの方でした。「いまうちの会で、果たして、このすばらしいガイドブックが作れるのか!?と、話しているところです。すごいですね!どうもありがとうございました!」ということでした。MNJからの参加も知らないで持ってきてくれているなんて、うれしいですね!

ほんとに、ガイドブック作成チームの皆さん、ありがとうございました。
日本中に飛び立っていったところですが、これから芽が出て花が咲いて実がなるのが楽しみです。

特に興味深かったのは、和田さんの患者会へのアンケートと、石井さんの患者学会の設立でした。アンケートは今年中に新しい結果がでるそうです。NPO法人化も必要なのか、どういう点でメリットがあるのか。資金の調達が困難なことや、役員交代の悩みはどこも共通のようでした。



<会員の方からの感想>
素晴らしい、素晴らしいです。これだけの情報を、ご苦労様です。

出席と詳しい報告有難うございます。
今、ざざーっと流し読みしました。ひとつの患者会としてMNJを客観的に見、活動を検証するのにとてもよい資料になると思いました。医療者側が患者会をどう捕らえているかが特に興味深いです。

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