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東京大学医療政策人材養成講座 公開ワークショップ 
『患者発の医療改革』
〜患者の視点はどこまで医療政策に取り入れられるのか〜


3月13日 大阪国際会議場(グランキューブ大阪)

<開会の挨拶>
高本眞一先生(東京大学医療政策人材養成講座プログラムディレクター)
「患者発の医療改革〜医の原点を考える」


今、「患者中心の医療」をどうして考えなければならないか。医者をして30年であるが、始めた頃は「心臓の手術をして亡くなるのはしかたがない」といわれていたが、現在は手術での死亡は5%以下になっている。(中略)
病気が治ることは患者さんの命の力であり、医者はサポートするわけである。(中略)学生には、患者さんとともにあゆむこと、実践できることをできるだけ教えていきたい。
医師だけではなく、患者さんの協力があって初めて病気とたたかえる。パートナーとして歩めるように医師も患者さんも成長しなければならない。医療政策に関しても新しい展開があるように、今日のワークショップが実りあるものになりますように。

<座長の挨拶>
埴岡健一さん(東京大学医療政策人材養成講座特任助教授)

医療には法令などかかわっており、「行政」「医療者」「患者」は三角形の関係であり、対立なのか強調なのかが重要である。患者と医療者間、患者と行政間だけのやりとりだけでは、医療者や行政にも無力感がおこってきており、患者が切り札を握っている。

どう働きかけるのか
  • なぜこうなっているのか(構造的理解)
  • どうすればいいのか(提案、代案)
  • それができるのはだれか?(当事者探し)
  • その人にそれを言う(伝達)
  • その人がそれをできるようにする(協働)
傍観、批評、クレーム・・・ではなく、、提言、行動、改革を。

患者にも、政策立案者と共に政策を立案することが求められてきている。
医療政策を決めるときには厚労省が原案を作り閣議決定、審議会などでオーソライズされれば、決定となる。族議員(元厚生大臣、厚生部会委員、医師会議員)が大きな役割を果たしていることを知らなければならない。患者団体の間で、どのような活動手法があるのか、ノウハウが共用されることが求められる。行政や医療者だけでは力不足で、患者団体は政治的構造を熟知した上で、中医協や族議員などの当事者に効率的に働きかける必要がある。

<キーノートスピーチ1>
「患者代表として今、医療政策に何を問いかけるのか」
勝村久司さん(医療情報の公開・開示を求める市民の会)


過剰な陣痛促進剤投与で娘さんを亡くしたことをきっかけに、多くの被害者を中心とする団体の事務局長、レセプト開示運動、中央社会保険医療協議会(中医協)の委員推薦者をしている。
被害者運動が求めている医療は、現に医療を必要としている患者や、普通の健全な感覚で毎日働いている医療者が望んでいる医療と一致している。

■ 陣痛促進被害の背景
  • 過剰投薬(微弱陣痛を起こさせる)と手抜き診療(出産への不自然な医療介入)
  • 一石三鳥の利益優先(人件費削減、薬価差益増、患者増)
  • 情報の非公開
  • 教育の不健全
■ 本当のインフォームコンセントとは
インフォームドコンセント→カルテ開示→レセプト開示の順ではなく
レセプト開示→カルテ開示→インフォームドコンセントの順でやるべきだ。

■ レセプト開示の意義 
医療費の単価=医療の価値観である。
一人あたりの医療費が単純に増えるだけでは、価値観が伴わず医療満足度がさがる。
医療の単価を変えていけば、医療への満足度はあがるはず。日本では医療費のことを国民に知らせてこなかったので、消費者意識が芽生えなかった。それを知らせることによって国民からの医療改革の意識がでてくる。

<キーノートスピーチ2>
「患者会に期待される役割と課題」
和田ちひろさん(東京大学医療政策人材養成講座特任助手・いいなステーション代表


これまで2冊の患者会ガイドの製作に関わってきた。
戦後、日本患者同盟や全国ハンセン氏病患者協議会による医療・生活保障などの要求運動、偏見排除のための社会運動が始まり、60年代からサリドマイド児親の会、水俣病患者同盟などが患者運動を始めています。こうした歴史を振り返ると、患者会と社会、また医療機関や政府、行政とは良好な関係とは言いがたく、むしろ対立構造にあったといえるが、近年、医療に対する患者からの提言に大きな期待が寄せられている。社会からの期待が高まれば高まるほど、患者会が従来から抱えているマネジメント能力の欠如、人材、資金不足などさまざまな課題を解決していく必要がある。患者会が社会の期待に答え継続的に活動できるよう、基盤整備を急がなくてはならない。また今後は、疾患限定の活動のみならず、疾患横断的ネットワークを構築し、患者共通の課題に対して取り組んでいくことも必要である。

■ 一般的に医療者側からみた患者会のイメージ
  • どこにどんな会があるかわからない
  • リーダーが替わり把握しきれない
  • 宗教との関わりがまかりとおっていると紹介しづらい
  • 運営がすべてうまく運営されているとはかぎらない。
  • 患者会が専門的な知識、技術を生半可に学習し、患者が医療者の治療や相談を受けなくなってはこまる。
  • 誤った情報が広がると困る。
  • 全ての人にあっているとは限らない。

●患者会への調査(1999年回答)
1620団体に郵送調査を依頼したが、606団体の回答しかなくかなりの掲載拒否がある。市や地区限定で活動しているものも含めるともっと数が多いのではないか。

■ 患者会の効果・意義(複数回答)
  • 同じ悩みを話し合うことによって仲間がいることを確認することができた(336)
  • 同じ悩みを話し合うことそのものに効果があった(240)
  • 医療機関や専門家などからは得られない情報を得ることができる(224)
  • 疾病そのものへの自己理解が深まった(168)
  • 団体に参加することにより対社会的に積極的に活動できる人が増えた(149)
  • 活動によって公的な施策が実現されてきた(141)
  • 社会にその疾病、状態などのアピールをすることができるようになった(135)
  • 病気や障害に対する考え方や捉え方が変わった(118)
  • 活動によって疾病や障害に対する社会の偏見や誤解が緩和された(66)
■ 患者会の活動
  • 広報誌の発行79%、相談業務72%、定例会の開催70%、法人格の取得は19%
  • 会費制が84% アメリカは無料のところが多い。
  • HPの所有16%、メールは25%。現在はもう少しふえているだろう。古いデータです。
■ 患者会の抱える問題(複数回答)
  • 一般会員の一部会員への依存傾向が強い(405)
  • 特定役員の負担が大きい(386)
  • 熱心な会員とそうでない会員の差が大きい((325)
  • 会員が地理的に分散しすぎており、個別対応が難しい(320)
  • 活動のための資金が不足している(281)
  • 活動がマンネリ化している(217)
  • 病院・医師・治療法等の選択についての相談への対応が難しい(124)
  • 活動が地域に根付いていない(120)
  • 活動するための場所を確保することが難しい(116)
  • 他の団体や利用できる資源などについての情報が不足している
  • 会費の未納が多い(107
  • 団体の中で相談や援助への専門性が低い
  • 同じような活動をしている他団体と連係が取れていない(84)
  • 団体の活動が発展する過程で活動が変質してきている(69)
  • 自分たちの活動の情報を発信する場がない(33)
  • 古い会員と新しい会員との対立がある(27)
  • 支部と本部の関係がうまくいっていない(26)
■ 患者会が望む支援
  • 活用できる社会資源の情報提供
  • 疾病に関する専門的な相談や助言
■ 患者会に化せられた今後の課題
  1. マネジメント力の向上 組織存続、人材確保、資金調達の方法を習得
  2. 社会との信頼関係の構築
    誰がいつ、どこで、何をしているのか情報発信をする能力が必要である。
    この講座でも一助となればと思うが、活動していることへのプライバシーも守らなくてはならない。
  3. 疾患横断的患者会ネットワークの構築
    自分の患者会のことは良くわかるが、よその患者会を知る機会がない、代表者同士の出会い。
    患者会の主張を集約し、代弁する組織の必要性 例、国際患者連合。
    日本では、乳がんの会の人がこの中に参加している。

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