マルファン ネットワーク ジャパン
国際Marfanシンポジウム参加報告 2

その四
 最終日、気になっていた、ワーファリンを使用している女性の妊娠についての可能性をやっと聞くことができました。これは会員さんがアメリカの事情を知りたいと言っていて、聞いてみると約束したものです。誰に聞いたらよいかわからなくて、ジョンズ・ホプキンスの心臓外科医で日本にもたびたびいらしているキャメロン先生にお聞きしました。
 私は経験がないけれど、彼ならわかるかもと紹介していただいた内科医に伺いました。田村先生が助けてくださり、話を聞くことができましたが、その先生の返事は、ワーファリンを使用しながらの妊娠は、現実的ではないというお返事でした。がそれでも、どこかに、実際そういう女性を診ている医師もいると思うし、どこかに文献があるはずだというのが田村先生の意見でした。文献を探してみるといってくださいました。実際、ヘパリンを使って胎児の器官形成期を乗り切るという記事も翻訳記事の中にあったわけですから、どこかでそういう研究をされ、実行している先生がいるのかも知れません。ただ、今回伺った何人かの先生はヨーロッパでもアメリカでも、ワーファリン使用はもちろん、妊娠中の女性の大動脈の拡張の懸念を指摘され、そちらのほうが心配だとおっしゃいました。気休めは良くないと思いますので、お返事だけお伝えします。

 最後がIFMSO会議出席の報告です。
 シンポジウムの最終日の夜、ダウンタウンのホテルの宴会場で、夕食を共にしながらIFMSOの会合が、開かれました。出席者、国は以下に記録しました。各国からの出席者がいくつかの丸いテーブルを囲んで座りました。まず会長プリシラの誕生日を皆が祝い、プリシラは次期会長に再選され3時間に及ぶ会議の司会を担当しました。各国でどういう取り組みをしているか、資料を手にして、説明をし、紹介をしてゆきます。食事はフランス料理のコースでしたが、彼女は食事をする時間があるのか、心配になるくらい、エネルギッシュにずっと話しながら、立っていました。
 プリシラの手に日本から送った絵本「マービン」があるのを見て、説明しなくてはいけないんだなと覚悟を決め、順番が来たらどう話そうかと考え始めた瞬間、食欲は失せ、仔牛の何とか煮も喉を通らなくなりました。「シンポジウムのポスター発表で見た方もいるでしょうが・・・」と切り出し、MNJがガイドブックと絵本「マービン」を作ったと紹介してくれました。「日本から来たヨウコです」、ぱちぱちぱちと拍手。拙い英語で、それでも、絵本のできた経緯を話しました。古藤さんを知っている人も何人かいました。MNJが今は300名を越える会員であることも、アドバイザーが30名以上いることも話しました。そして、「そのうちのお一人を紹介したいと思います」として、田村先生をご紹介しました。「私は部外者かもしれないけれど」といいながら、田村先生は流暢にとうとうと話されました。マルファンクリニックでボランティアをされていた経験など話され、これからもMNJをサポートしてゆきたいと話してくださいました。心強い限りです。その他詳細は議事録を訳しましたので、ご覧ください。会議では、日本に限らず、この疾患が医療関係者の間でも決して知名度が高くなく、各国の患者会は周知活動に心を砕いていると言うことがわかりました。

 思えば、この会議に先立ってメールで送られてきたアジェンダ(議事)に「絵本マービン」のことを紹介するとあったのを読んで、出席しなくてはとはるばるゲントまで来たのです。最後にIFMSOの副会長という大役のお土産までついてきてしまいました。私は上手に断る術もなく、とんでもないと言いましたが、田村先生が「困ったときはサポートするから、受けなさい受けなさい」といい、夫も「ネツト上で協力すればいいだけだろ」などと無責任なことを言い、役員会からの推薦ということで、majority vote(賛成多数)で承認されてしまいました。他にアジアの代表がいないので、選ばれたのです。ネツト上だけではありますが、言葉も苦労しますし、結構時間をとられることは確かです。
 最終日、会議が終わったのは午後11時。ブリュッセルまで戻るのにまた、翌朝早く列車に乗らなくてはなりません。ゲントでの4日間のお礼を言って、別れを惜しみ、再会を約束し、(次のことはまだ、決まっていませんが)、ホテルに戻り、深夜あたふたとパッキング(荷造り)をして、翌日に備えました。およそ上等とはいえないホテルで、シーツもずっと毎日一緒でしたが、去るとなるとおそらくこの町に戻ってくることはないだろうと名残惜しい思いでした。マルファン症候群ひとつをテーマに各国から人が集まり、ともに過ごした4日間は特別なものでした。
 今回、私たちを側面から支援し、シンポジウム参加を可能にしてくださったスタッフの皆さん、また、ご厚意を寄せてくださった多くの会員の皆様に心から感謝します。有難うございました。

IFMSO会議の議事録
開催日時:2005年9月17日土曜日
午後8時から午後11時
場所:ゲント、ノボテルホテル
出席者:
ベルギー Yvonne Flemal Jousten   Wessel Carlier  Simone Preston
カナダ Josipa Paska
デンマーク Pernille Strauss  Rikke Strauss
フランス Paulette Morin  Gisele Cullerier
オランダ Peter Alkemade  Andre Martherus  Ruben Martherus
日本 Yoko Shimozaki  Tokuo Shimozaki  Chieko Tamura
ノルウェーWenche Snekkevik  Linn Hustad
ポーランド Anna Ignys
スペインCharlene-Beth Arnold Bichler  Fernando Aguado Posadas
スイス Ingrid Maelle Perez Humpierre
 Beatrice Preston, Chairman European Marfan Support network (EMSN)
イギリス Diane Rust  Robin Rust
アメリカ Priscilla Ciccariello, President IFMSO Joseph Gagliano Josephine Grima
Carolyn Levering Cheryl Williams, Secretary/Treasurer IFMSO

IFMSO会長プリシラによる開会宣言
プログラム
1.挨拶と出席者紹介
2.会計報告 シェリル・ウイリアムス
2003年から2005年8月まで
収入 会費と寄付 total 895ドル
支出 IFMSOのウェブサイトの契約料とドメイン登録料total 1262ドル54セント
367ドルの不足
過去議事録の承認
2002年8月ボルチモア大会議事録の承認
カナダが提出、報告、ベルギーがセカンド、多数決により承認される。
2003年7月イリノイ、オークブルックのアドホック ミーティング議事録の承認
ノルウェーが提出、報告、アメリカがセカンド、多数決により承認。
3.IFMSO会員と会費に関して
年会費は25ドル、25ドル以上の余裕がある組織には別に寄付をお願いしたい。IFMSOのホームページに関する出費がかさんでいるので、有志がドメインを含め、より安価な方法を検討中。
NMFから不足分500ドルを借りていることに関して。NMFの会長ジョーより次年度NMFが500ドル分収入を増やすことができれば借金は返さなくても良いとの提案があった。この目標は達成可能なことだとの予測が多数決で認められる。オンラインによる会費の支払いについても話し合った。
2005年―2006年の予算について
動議、総予算を500ドルにすることをプリシラ会長が提出。アメリカ、スペインがセカンド。多数決により承認。
4.以下のマルファン組織からIFMSOに手紙、および連絡があった。
オーストラリア Justin Nix, Vice President Marfan Association Victoria Inc.
南アフリカ Lorna Higgs, South African Marfan Syndrome Organization (SAMSO)
ブラジル Flavia Di Gioia, Brazil Marfan Foundation
配布された報告書をメンバーが読んだ。内容はそれぞれの国での新しい取り組みと会の活動報告。
オーストラリアのジャスティンによる夏のNMFの全国大会(テキサス州、モンタナ)に、会からの奨励金を得て、参加したとの報告はうれしいものだった。新しく誕生した組織の受け入れと手助けの方法についても話し合われた。
5.IFMSOについて
・会の目的と会員の確認
配布された資料*を検討。プリシラがこれらを承認する動議を提出。シェリル(会計、書記)がセカンド。多数決により承認される。*省略
6.ファクトシートについて
データを最新のものに書き換える必要があるとの指摘。スイスのマエラがこの仕事を引き受け、その後役員会の承認を受けることを申し出た。
どのように会を立ち上げるか?
現在のものを新しいものに書き換える必要があるとの意見。スペインのシャーリーン・ベスがこの役を引き受けるとの提案が出され、イギリスがセコンド、多数決により承認。
7.出版や翻訳に関する会員活動報告
日本、霜崎洋子、遺伝カウンセラー田村智英子が、新しく作成、翻訳した絵本マービンについてその作成経緯を報告。MNJの会員数は350名との報告あり。
スペイン、ベスの報告。2004年の年次報告を印刷して会員に配った。
イギリス、ラスト夫妻がイギリスのニューズレターの記事を読んだ。
ポーランド、アンナ・イグナスの報告。2005年にマルファン症候群に関するテキストを作った。
オランダ、ピーター・アルカマドの報告。年4回ニューズレターを発行している。
CEO(中央ヨーロッパ組織)がニューズレターを発行したとベルギーのイボンヌが報告。
ノルウェー、リン・ハスタッドの報告。各国語で書かれた救急カードを発行。英語、各ヨーロッパ語、日本語、などで記載されているので国外旅行に有用だろう。
フランス、ジセル・クルニエの報告。ウェブ上で取得できるように子どもたち向けのチラシを作った。救急用のカードもフランス語で作成。
8.EMSN(Europe Marfan Support Network)の救急カードに関して 
項目7で報告したようにノルウェーとフランスが救急用医療カードの発行を準備中。さらに、マルファン症候群に関して、国際的にこれに関連する病院の見直しを、定期的に更新する件について話し合いがなされた。ジョー・グリマ(アメリカ)が自己弁温存の患者を3年間世界の26の医療施設において追跡調査し、データベースを作る予定というプロジェクトについて報告。この報告は将来、手術を必要とする患者が自己弁温存、ベントール法のいずれで行うか、意思決定をするのに、また、自己弁の手術のあと、再手術の必要の可能性について探るのに役立つであろう。

9.関連団体の協働作業について
EMSNやCHDCTあるいはその他の団体をIFMSOにリンクさせること、またそれについて、ウェブに関わる専門知識を持ったメンバーが関与することについて話し合った。NMFのジャネット・ナビアが適任と推薦された。
10.ホームページの目的、中身構成、利用法について
ウェブマスターの仕事に関して、また、ウェブを活発にさせるために、情報を提供したり、付け加える仕事をするコーディネーターを置くことに関して、話し合いがなされた。IFMSOニューズレターの編集のために各国から担当のボランティアが記事を提供し、それをまとめる編集者が必要との話がなされた。カナダのローラ・リブラレッソがその役を引き受けると申し出た。会報はネット上で年三回発行する、そして、毎回違う国が担当し、自分の国に関して自国語で特集を組むことにする。そうすることで国際的な会報にすることができる。会報には各国の活動の様子を載せ、それによって討論の場を提供する。それぞれの国のボランティアは(英語への)翻訳も行うものとする。各国担当ボランティアは話し合いの結果下記の通りに決定。
Pernille Mai Strauss Warren (デンマーク), Charlene-Beth Arnold Bichler (スペイン),
Ruben Martherus (オランダ), Gisele Cullerier (フランス), Linn Hustad (ノルウェー), そして
霜崎洋子 (日本)
オランダのRuben Martherusが仕事上関連のあるアジア・アフリカを担当することを申し出た。
その他、ウェブ上にカウンターを設ければ、訪問者数を知ることができるようになる。また、将来的にブログの可能性も図る。
11.IFMSOの 将来に向けて
将来リサーチャーを設ける、そして、そのために公的にも私的にも資金が必要との話しあいがなされた。会議出席者(クリックすると写真が大きく表示されます)
12.役員選挙(会長、副会長、会計、書記)
向こう3年間、プリシラを会長、シェリル・ウイリアムスを書記、会計とする動議をイギリスが提出。セコンドされ、多数決で承認。役員会から、以下の4人を副会長に指名。
Justin Nix (オーストラリア), Vice President representing Australia
霜崎洋子 (日本), Vice President representing Asia
Wenche Snekkevik (ノルウェー), Vice President representing Europe
Pernille Mai Strauss Warren (デンマーク), Vice President representing Europe.

閉会午後11時
記録:シェリル・ウイリアムス(IFMSO書記、会計、NMF役員)




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