マルファン ネットワーク ジャパン
知らないと恐いマルファン症候群  

2.救急法(一次救命手当て)

 しかし,すべてを尽くしてもすべての患者を未然に発見することは不可能です.また,管理が何らかの理由で不可能である(たとえば,経済的理由や社会的な理由等) こともあるでしょう.いずれにせよ,スポーツの現場で突然に選手が倒れる可能性は少ないにせよゼロではありません.そこで,9月号から不幸にして,マルファン症候群を発見できずに,スポ-ツ現場で選手が倒れたときの対処法についてお話しています.

 マルファン症候群であることは,倒れたときには分からないはずです.そこで,スポ-ツ中に選手が急に倒れたときを想定してお話ししています.すなわち,マルファン症候群で倒れたときに尽くす手段についてではなく,一般の救急法のうち一次救命手当てについてまとめています.

 選手がスポーツの現場で急に倒れたときに,取るべき対処法の手順を覚えるのに便利な言葉ABCを解説してまいりました.Aは,Airway気道の確保,BはBreathing人工呼吸,CはCirculation循環(心臓マッサージ)でした.この順に手を尽くしていけば正しい手当てを行うことが出来るのです.便利で, しかも,簡単に覚えることが出来る言葉なので,ぜひ覚えておくとよいでしょう.

 ヒトは生命を維持するために,空気中の酸素を肺の中に取り込み,取り込まれた酸素は血液を介して全身に運ばれます.また,ヒトのからだは酸素なしで一定時間生きながらえることができるようになっていますが,最も重要な脳神経細胞は3分間の酸 素欠乏で組織が死んでしまいます.すなわち,患者の命を救うことが出来るのは,倒れた現場で正しい処置が施されれたときにかぎるということが出来ます.正しい処置 が施されなかったときには,救急車が来たときには,すでに手遅れであることがほとんどでしょう.そこで,是非みなさんにも,一次救命手当ての方法を知っておいていただきたいと思います.

 今回は,これまで解説してきたABCを,実際に二人で行っていく具体的方法について解説したいと思います.

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