1.はじめに
前回は,マルファン症候群を見落とさないためのメディカルチェックの実際についてお話ししました.簡単にまとめてみましょう.
- 裸眼視力が0.3以下
- 親戚に突然死した人がいる
- 身長が高い(男192cm以上,女178cm以上)
- 指極間長が身長より長い
- 母指徴候
- 手首徴候
- 心雑音
- 脊柱,前胸部の変形
以上の8項目チェックが大切です.7.の心雑音は心臓専門医によるものですが,他のものは,現場でも出来るチェックと言えます.あやしいとき,疑わしいときには,
是非,心臓専門家による診察を受けるようにしましょう.
マルファン症候群は,知らずにいると若年者で突然死の原因となりえる疾患です. しかし,マルファン症候群であることを知り,正しい対処を施せば,突然死の危険はぐんと減り,天寿を全うすることができる疾患であることはこれまでも強調してきま
した.マルファン症候群の病態のなかで,若年アスリートの突然死の原因に限れば解離性大動脈瘤がもっとも重要といえます.この解離性大動脈瘤は,自覚症状を出さずに徐々に大きくなっていき,最終的には動脈壁が破れて動脈瘤が破裂します.大動脈瘤が破裂する前に検出し,破裂を未然に防ぐことが,命を救う唯一の方法です.
若年時に解離性動脈瘤破裂を防ぐことが出来,高齢者まで心臓専門医の管理の下に生活を送れば天寿を全うすることも可能な疾患,それがマルファン症候群です.すなわち,マルファン症候群では,若年者は突然死の予防を,高齢者では心不全の管理を受
けることが重要といえるのです.
今月は,マルファン症候群が疑われたときの対処についてお話しします.
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