マルファン ネットワーク ジャパン
知らないと恐いマルファン症候群  

1.はじめに

 これまでマルファン症候群は,知らずにいると若年者で突然死の原因となりえる疾患であることをお話ししてきました.しかし,今一度強調しておきたいことは,マルファン症候群であることを知り,ただしい対処を施せば,突然死の危険はぐんと減り ,天寿を全うすることができる疾患であるということです. マルファン症候群の病態のなかで重要なのは,若年アスリートの突然死の原因に限れば,解離性大動脈瘤が もっとも重要といえます.マルファン症候群では,大動脈壁に構造的異常があり壁の強度が弱いために,血圧が上がると容易に動脈壁が解離し,解離した動脈壁内に血液 が流れ込み,解離性動脈瘤を作っていきます.この解離性大動脈瘤は,自覚症状を出さずに徐々に大きくなっていき,最終的には動脈壁が破れて動脈瘤が破裂します.大動脈瘤が破裂する前に検出し,破裂を未然に防ぐことが,命を救う唯一の方法です. 若年時に解離性動脈瘤破裂を防ぐことが出来,高齢者まで心臓専門医の管理の下に生活を送れば天寿を全うすることも可能なのです.すなわち,マルファン症候群では, 若年者は突然死の予防を,高齢者では心不全の管理を受けることが重要といえるのです.

 先月号では,バスケットボールチームの医学的管理をする立場から,マルファン症候群を念頭においたうえでの管理方法について解説しました.今月は,実際に私が管理しているチームの具体的な管理方法について,ご紹介したいと思います. 

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