マルファン ネットワーク ジャパン
知らないと恐いマルファン症候群

1.はじめに

 テレビや新聞等では,華やかなスポーツの表舞台が報道され,一般大衆はスポーツの素晴らしさに酔いしれます.その裏ではさまざまなスポーツ中の事故が起こり,選手や家族,チーム,所属団体,医師,トレーナー等が頭を悩ませます.スポーツ中の事故は,2つに分けることが出来ます.一つ目は,捻挫や骨折,脱臼といったアクシデントによるもののため,多くは未然に防ぐことができない性質の事故です.これはさまざまな要因がからんで起こるアクシデントで,自らの限界ぎりぎりのところで競技を行う選手に起こるものなので,ある程度は覚悟していることでしょう.もうひとつは,手段を尽くせば事故の発生を予測したり,未然に防ぐことが出来る性質の事故です.この種の事故は,もしもあらかじめ手段を尽くさずに事故が起こってしまった 場合,選手や家族,チーム関係者等の後悔は図り知れないといえます.なぜならば,手段を尽くせば未然に防ぐことが出来たかも知れない事故だからです.

 マルファン症候群による死亡事故は,後者に分類される事故です.すなわち,スポーツに参加する以前に,しかるべき検査を受けていれば,多くを予測し(残念ながらすべてではない),手段を講じることが出来るのです.前回お話しいたしましたよう に,マルファン症候群は,バスケットボール選手に潜在的に多く含まれている可能性がある疾患です.しかし,マルファン症候群という名前は,バスケットボール関係者 や,一般の方には,あまり知られていません.あるいは,名前だけは聞いたことがあるが,詳しく知らない,どのような対処(予防措置や,事故時の対応等)を取ればいいのか分からないといった方が多いのが現状です.この連載特集により,マルファン症候群への認識が高まり,1件でも事故の予防が出来れば幸いです.

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