マルファン ネットワーク ジャパン
心臓血管についてのQ&A

Q-07-1
マルファン症候群患者のベントール手術と合わせて弓部大動脈置換を考えるということは  現在の治療の大きな流れなのでしょうか。
Q-07-2
また、メリット・デメリットについても教えて下さい。


手術と経過
  平成5年僧帽弁閉鎖不全により人工弁置換術
  1ヶ月後弁輪に不具合あり再手術
  以降12年間体調崩すこと無く経過。39歳男性です。

現在の状態
平成13年10月心エコー検査 大動脈基部48mm
平成15年10月 50mm
平成17年 4月 56mm
平成17年 4月大血管CT61mm
  逆流     2度

  最近以前と比べ若干疲れ易くなったと感じることがあります。

上記内容にてセカンドオピニオンを受け、早めにベントール手術を受ける予定です。
合わせて医師より弓部大動脈も人工血管に置換しておけば将来下行大動脈や腹部大動脈に解離性・瘤性変化が生じた場合でも同病院の循環器内科との協力でステント治療で治すことができるため将来の憂いをかなり軽減できるのではないでしょうかとの提案をもらいました。
弓部の径につきましてはハッキリした数値は確認しておりません。
多少大きくなっているものの手術適応範囲ではないとのこと。
将来のことを考えた場合大動脈基部の治療と合わせて弓部置換という方法もあるという提案であります。




A-06-1
手術に関しては、ベント−ルで良いと思います。
弓部の予防的置換の目的は、弓部を含む解離が発生した場合に、治療法として低体温法を用いて再手術を行うようになることが多くなりますが、その時に胸部下行大動脈を含む広範囲置換や癒着のある正中切開を行う必要が出てくるため、リスクが高くなり、それは初回手術よりもリスクが高いと判断されます。したがって、初回に弓部置換を行った方が良いと言うことです。
弓部置換は、弓部に拡大や解離が無い場合は、適応が制限されます。エビデンスはありません。脳合併症や脊髄合併症、出血などが問題になります。手術のリスクが、高くなりますので、その外科医の成績が問題になります。0%のリスクなら絶対に行った方が良いですが、そんなことはありませんから。
マルファン症候群のステント治療は、未だコンセンサスを得られていません。ベント−ルは早く受けた方が良いと思います。

東京女子医科大学
青見茂之

A-07-1-2
今回が初めての手術であれば、弓部が大きくないのなら基部再建(ベントールあるいは自己弁温存手術)だけで留めることが一般的と思われます。大動脈解離の合併、あるいは弓部まで拡大しているときには初回手術であっても弓部まで置換するべきといわれていますし一般的です。ご相談の方は、今回が3回目の正中切開(胸の正面からの)手術となります。次回弓部を置換することになると4回目となり、癒着の問題などでちょっと大変になるかもしれません。4回目は避けたいという考えからのご意見であろうと思われます。

A-07-2-2
メリット
@弓部を置換することで今後正中切開(胸の正面の傷)から手術を行うことがまず必要ない状態となる。
 (ひょっとしたらあるかもしれない正中切開4回目の弓部手術を3回目ですべて終わらせてしまう)

A今後問題が起こったとしても胸部下行、腹部大動脈であればいろんな治療法の選択が可能となる。

デメリット 
@ なんといってもベントール手術だけと違い、今回の手術自体が大きなものとなり危険が増す。
(弓部まで置換するために脳合併症の危険が増す、手術時間も長くなる

いずれにせよ非常に納得できる提案だと思います。どちらの選択であっても決して間違いではありません。専門家の意見も分かれるかもしれません。 ですから正直に先生に質問されては如何でしょうか?
@ 基部再建のみと弓部まで置換する手術を比べると、今回ではどれくらいの危険性が増すとお考えですか? 
A 先生は基部置換と弓部の同時手術のご経験はたくさんおありですか?(お勧めになるからには、十分な経験をお持ちの先生だと想像しますが、、、、)

あくまで個人的な考えとして聞いて下さい。小生も同様の提案をするように感じました。理由はメリットの@、Aに加え、最近の定期の弓部置換術が安定した良好な成績であること、39歳という若さで十分な体力をお持ちであろう、と予想したからです。(あくまで一外科医の意見と考えて下さい。なぜなら検査結果知らずご本人も診察していない小生の意見ですから、参考程度に留めて下さい) 最終的には十分本人ご家族と相談して決めると思います。詳細はパンフレットを読んでいただけるといいかもしれませんね。

とにかく一番大切なことは、基部のサイズが大きくなってきている現在、逆流がU度でも仮に急性大動脈解離が起こると、@緊急手術、A急いで癒着を剥離するという危険を伴う、B解離があるので基部再建だけではなく弓部まで置換しなければならない、、C胸部下行や腹部にまで病変を残す、、、という悪条件が重なります。早めのベントール手術は是非お勧めしたいと思います。

嬉野医療センター
須田 久雄

A-07-3
現在手術成績が良くなったとしても、弓部置換まですると手術が大きくなりますし、弓部置換を合併すると100%安全というわけではありませんので、現在弓部が正常ならば、手をつけないほうが良いと思います。
将来ステントグラフトということでしたが、マルファンの方にはステントグラフトは適応しないほうが良いと思います。何故なら、若いということ、将来ステントグラフト留置部が拡大する可能性が高く、endoleakが起こる可能性が大きいからです。
弓部が大きくなれば、その時点で手術をするのが適切と考えます。
我々はベントール手術の際に、残った上行大動脈を人工血管でwrappingして将来の拡張防止を図っています。

東京大学大学院医学系研究科
臓器病態外科学心臓外科 呼吸器外科
高 本 眞 一

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