マルファン ネットワーク ジャパン
心臓血管についてのQ&A
Q-04-1
今現在、大動脈基部の手術を控えて入院中で、来週あたりに手術予定です。
44歳、女性です。
11月のエコーでは、基部が49mm、バルサルバが50mm、上行が55mmで、逆流はレベル3です。
血圧は、カルブロックを服用していて上が150くらいだったので、もう少し低く120くらいにしましょうということで、入院後は一日に、コニール4mmを3錠、レニベース5mmを1錠に変えたそうです。

普段、生体弁は50歳以上を目安にしているけど、44歳でもマルファンだから次の手術となった時にワーファリンを飲んでいると厄介だし・・・ということで、外科の主治医には生体弁を勧められたそうです。
10年で9割、20年で7割の人が再手術をしないで済んでいると聞いて安心はしたそうなのですが、やはり生体弁は高齢者、もしくは妊娠出産の可能性がある若い女性に使うもの、若い人の方が弁の劣化が早いということも耳にしているのそうなので、それらの点について何かアドバイスをいただけたら助かりますという話でした。
また、マルファンだから置換した生体弁の劣化が早いということはあるのでしょうか。

上記の生体弁での再手術回避率は、今の日本での現状なのでしょうか。

内科の医師は、生体弁使用は65歳以上を目安にしているとも言って いたそうなのですが、44歳で使うというのも最近ではよくあること なのでしょうか。


A-04-1-1
44歳女性の大動脈基部置換術ですが、手術適応には問題はありません。術式ですが、我々は可能ならば人工弁ではなく自己弁を温存した、基部置換術を行います。その理由は人工弁にまつわる合併症を避けるためです。もし、自己弁温存が不可能ならば人工弁となりますが、一応の目安は、60―65歳以上は生体弁、それより若い方は機械弁としています。その理由は、若年者では生体弁の劣化が早いことです。この年令で10年の再手術回避率が90%は期待できないと思います。勿論、患者さんの御希望が先ず第一です。また、マルファン症候群であるから人工弁の劣化が早いというエビデンスは有りません。

神戸大学医学部附属病院心臓血管外科 教授
大北 裕


A-04-1-2
ご理解されている通りだと思います。小生も生体弁を置換する患者さんは、やはり生体弁は高齢者、もしくは妊娠出産の可能性としております。生体弁のいわゆる寿命についても、小生もそのように説明しています。

マルファンだから、ということはありません。確かに若い方のほうが弁の劣化が早いと一般的にいわれていますが、きちんとしたデータがあるのというと、(?)です。ご高齢の方に比べて若い方が活動性が高いことを考えれば、ある程度真実かもしれません。

日本のデータも欧米のものと大きな差はありません。生体弁の使用頻度がアメリカが多いので、数が多いデータとしては信用できますし、その結果をもとに説明しています。少なくとも日本の現状も大差ないと思われます。

小生自身は、44歳で生体弁を置換した経験はなく、今までは機械弁でした。ただし、最近の生体弁の遠隔成績は随分とよくなっていますので、選択肢が広がってきているのは事実です。
十分相談されて決めていただくのがいいでしょう。ふたつの弁があるということは、お互いの長所、短所があるわけですから、それを十分理解されて選んでください。

ところで確認なのですが、ご相談いただいた方は大動脈基部の病変以外に、慢性の大動脈解離(例えばスタンフォードB型)を合併されておられるのでしょうか?小生だと、慢性解離の合併と胸部下行大動脈の大きさも判断材料にすると思いますので、聞かせてもらいました。

嬉野医療センター 心臓血管外科
須田 久雄


Q-04-2
・15年前に腎臓にいく血管の下から二股になっているところまでを人工血管に置換。
・2年前に胸部下行から横隔膜の上までを人工血管に置換。
・横隔膜の上から腎臓に行く血管の下まで、13センチ自分の血管が残っている。そこは現在55ミリ。60ミリになったら手術と言われている。
・弓部から下行にさしかかる所も解離が少し残っている。
・右腕と左腕の血圧が40ぐらい違う。


A-04-2
大変よく状況が把握できました。
お教えていただいたおかげで、主治医の先生のお考えが良くわかりました。

問題となるのは以下の三点だと思います。
@ 機械弁か生体弁か?
A 今回弓部まで一期的に置換するかどうか?

・弓部から下行にさしかかる所も解離が少し残っている。
・右腕と左腕の血圧が40ぐらい違う。

このことを考えると今回基部から弓部まで一期的に置換することを考慮することも、十分頷けます。

B 残った横隔膜〜腎動脈までの血管の手術のタイミングは?

横隔膜の上から腎臓に行く血管の下まで、13センチ自分の血管が残っている。
そこは現在55ミリ。60ミリになったら手術と言われている。

確かに将来は手術を考えるべきかもしれません。
仮に今回弓部まで置換したとしても、このBの手術が残っています。このことを考慮して@を生体弁というお考えなのでしょうね。従って生体弁の選択にも十分納得できます。
いずれにせよ、非常に担当医の先生が熟慮して下さっているのが目に浮かびます。(きっと経験豊富な先生でしょうね)

十分先生と相談されて、納得の上で手術を受けて下さい。@ Aともに意見が分かれるところでしょうが、どちらの選択をしても正解のような印象をもちました。
お答えになってないようですが、以上が小生の正直な気持ちです。
CTなどの検査結果を見ていない医者のコメントですから、あくまで参考にとどめて下さい。

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