Q-03-1
今回僧帽弁の手術のみと言われていますが僧帽弁と基部の手術は同時可能なのか?
Q-03-2
通常は一緒にやるのか?別なのか?どういった人が同時手術になるのか?
Q-03-3
僧坊弁の手術だけなら技術的には難しいものではないのか?(ただしマルファンであることを前提にして)
<心臓超音波の検査結果報告書>
[LV contraction] |
LVDd: |
55mm |
LVDs |
34mm |
EDV |
147.4ml |
ESV |
47.4ml |
SV |
100.0ml |
EF |
67.8% |
FS |
38.2% |
[Aorta] |
openingD |
40mm |
[Dimension] |
AOD |
40mm |
LAD |
43mm |
<コメント>
M弁の前尖の肥厚、prolapseあり、特にPMC側は強い。両交練部よりMRあり、ALC側はmildだがPMC側はsevere
MRとなっている。
MSなし、LAの拡大も軽度認める。またNCCの拡大も認める、ARはmild。上行大動脈は軽度拡大。左室機能は保たれる、LV拡大軽度のみ、TR
mild、PE少量あり
<服用している薬>
ラシックス錠 |
20mg |
バイアスピリン錠 |
100mg |
アルダクトンA錠 |
|
(ここまでは軽い心不全になったときから) |
タンボコール錠 |
50mg |
タナトリル錠 |
5 |
スローフィー |
|
アーチスト錠 |
20mg |
A-03-1
大変詳細な情報をいただいたのでよくわかりました。お尋ねいただいた点につきお答えします。
もちろん同時にやることは十分可能です。大動脈弁、僧房弁ともに逆流が高度であれば、同時に手術を行わざるを得ません。しかし、両方やるということは、それだけ心臓を止める時間が長くになるわけですから、手術の危険性も増すことは事実です。
A-03-2
まずは、単純に考えて下さい。僧房弁も大動脈弁も、治療が必要であるくらい重症かどうか、いうことです。
片方が軽ければ、もう片方だけの治療で済ませます。しかし、同じ心臓の病気ですから両方悪ければ一緒に治療できます。言い換えれば、一緒に治療しないと片手落ちではいけない、と思って下さい。
さて、ここからが非常に判断が難しく、専門家でも意見が分かれるところです。
今回、僧房弁の治療が必要であることは間違いありません。大動脈基部に対する手術を同時に行うかどうか、が最大の問題だと思います。CTやエコーの所見をみたわけではないので確定的な事はいえませんが、大動脈弁の逆流の程度や、弁輪や基部の大きさ次第では、一緒に基部再建も考慮することがあります。その際、次のようなことを天秤にかけて総合的に判断します。
一緒にやってしまうプラス点:将来の再手術が不要、上行大動脈の急性解離による突然死を回避することができるマイナス点:手術自体が長時間となり、リスクが増す。人工弁が入るとワーファリンが必要となる。
A-03-3
僧房弁の逆流に対する手術は大別してふたつあります。自分の弁を修復する弁形成と、人工弁による弁置換術です。
僧房弁手術そのものは、技術的に難しいものではありません。しかし、教えていただいた検査結果から考えると、弁形成となると比較的難しいかもしれません。やはりマルファン症候群の方の僧房弁形成術は決して簡単なものではありません。そうなると人工弁置換術も十分念頭に置いておくべき状態と思われます。
以上、簡単に一般的なことをお答えしました。
嬉野医療センター 心臓血管外科
須田 久雄
A-03
僧帽弁と大動脈基部の同時手術は可能です。通常は同時にやるかどうかは必然性の問題です。僧帽弁閉鎖不全は最近は人工弁置換ではなく、弁形成術が積極的に行われており、結果として手術時期も明らかな心不全や不整脈の発生する以前の比較的早期に適応とされることが多くなっています。指標としてはLVDs
45mm以上、LVEF60%未満が無症状であっても手術適応とされており、症状のある場合や確実に弁形成可能と判断される場合はこの基準に達さなくても手術適応とすることもあります。またMarfan症候群の大動脈基部の手術導入時期としては、最近では手術成績の向上もあり最大径45mm以上を適応とする事が多くなっています。
両方の手術適応を満たせば当然同時手術を考えるべきであり、一方の手術適応のみを満たす場合は一方のみの手術を考えますが、その場合は将来、再胸骨正中切開の再手術の可能性を残すことになるため、注意が必要となります。(心臓血管手術の再手術成績も向上してきましたが、初回手術と全く同じというわけにはいきませんので。)高齢者や手術危険因子の多い患者さんでなければ、できれば手術介入機会を減らす意味も含めて、大動脈基部の手術と僧帽弁形成もしくは置換術を無理なく同時に計画できれば理想的と思います。
ただ同時手術を目指す事のみを考えて、症状のある僧帽弁閉鎖不全の手術時期を遅らせ、心機能の悪化をきたしたり、不整脈をおこしたりしては結果としてより予後が悪くなることもあり得るため、複合病変をもつ患者さんに対して病状に応じたバランスをとった個別の判断が必要となります。
心臓超音波検査結果からのみ判断すると、大動脈基部の拡大は40mm?とのことですので、いまの時点では手術介入の時期ではないように思います。僧帽弁閉鎖不全は中等度で絶対適応ではないものの、症状がある場合や以前に比べて明らかに増悪傾向にある場合では手術を考えても良い時期だろうと思います。(僧帽弁の手術だけなら技術的には難しいものではないのか?)については、一概には答えにくいですが、大動脈基部の手術と比較すれば、Marfan症候群であることを前提としても安全性の高い手術であるといえると思います。
あとは経過を観て下さっている主治医の先生とよく相談の上、結論を出されるのがよいと思います。
浜松医大附属病院 第一外科
山下 克司
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