マルファン ネットワーク ジャパン
眼科についての Q&A
Q-02
白内障の手術後の目のかすれと、白内障手術についてU」
先日、M大のY先生に話を聞きました。かすれ目は、後発白内障ではなく、(左目の手術の際、袋は残せなかったのだそうです)硝子体がはがれてきていて、それですりガラスを通したように見えるのだそうです。完全にはがれているわけではなく、一部はくっついているのだそうです。これの改善のための手術はM大ではしないと言われました。かすれて見えるというものの、とりあえず視力が出ているし、このことで、私のように見えないと訴える人はあまりいないと言われました。

A-02
硝子体がはがれている、ということと、スリガラスを通して見えるということの関連が私にもよくわかりません。間の説明がすこしスキップされている可能性があります。
たとえば、硝子体がはがれてきていて、それによって網膜が引っ張られて、あるいはシワがよっていて見え方の質が悪いとか、硝子体がはがれかけていて、そのために硝子体に少し濁りがあって見え方が悪いなどが考えられます。

いずれにせよ、硝子体が不完全剥離の状態であるということは間違いないようですし、それによる視力低下が0.8程度におさまっているのであれば、確かに手術がすぐに必要とは言えないと思います。
改善のために手術という選択もありますが、網膜硝子体の手術はデリケートですから、普通に特に問題がなく手術が行われても、結果的に視力が改善しない、あるいは悪化する可能性もあります。
現在の状態が90点の見え方とすれば、これを95点にするのは非常に難しいわけです。
逆に50点の視力を80点にすることの方が簡単だといえます。術前の視力が悪ければ悪いほど、その改善度も上がりやすいというのが病気の困ったところでもあります。


Q-02-2
私は仕事上で常に文字を見なくてはならないので、非常に見づらく気になるのです。確かに遠くの景色は気にならないのは確かですが。これを改善するというのは不可能なことなのでしょうか。また、このまま放置しておいて何ら問題はないものなのでしょうか。

A-02-2

手術をした眼はやはり人工のものです。長時間、根を詰めて物を見れば、見え方は落ちてきます。
それは仕方のないこととお考えください。

放置してよいかどうかは、網膜の状態を診察しなければわかりません。
単に不完全剥離の状態で、網膜にシワがよっていないのであれば、問題ないと思います。


Q-02-3
 右目の手術は、左目と同様に、水晶体を取ってレンズを縫い付けるというとのことで、左目と同様に硝子体がはがれてくる可能性はあるといわれました。これを避けることは出来ないのでしょうか。

A-02-3
硝子体がはがれるというのは、正確には、硝子体の後ろの面(=網膜と接触している面)がはがれる状態で、後部硝子体剥離と呼ばれています。これは、正常な人でも60歳ごろにはみな生じてきます。近視が強い人、他の眼の病気がある人、眼の中の手術をした人などはもっと早く40歳代や術後に発生することもあります。

ただ、後部硝子体剥離は、それ単独では病的な意義はまったくなく、老化現象に過ぎません。
しかし、はがれる瞬間に網膜を強く引いて網膜を破れば網膜剥離の原因となります。
また、はがれた網膜の部分にたまたま太い血管が通っていれば、それが破れて出血しますので、硝子体出血の原因にもなりえます。さらに、後部硝子体膜のはがれ方によっては、網膜にシワを作るような病気を引き起こしてくる可能性は否定できません。


Q-02-4
 手術はM大で9月2日に予定しています。

A-02-4
レンズを完全にとってIOLを縫い付けるというのは、現在のもっとも標準的な水晶体亜脱臼の手術だと思います。 レンズの取り方にも二種類あったりしますが、結果的に水晶体嚢を残さない術式です。
私は、水晶体嚢を残し、その中に骨(のような部品)を入れて、水晶体嚢そのものを固定して眼内レンズを入れるという手術を採用しています。 残念ながら、日本でこの手術を採用しているのは井上眼科病院だけです。 骨のような部品を使うのは非常に高度なテクニックですので、本やビデオでちょっと勉強したぐらいではできるようにはなりません。 井上眼科病院以外で採用されていない理由はそこにあります。

術後の定期検査などを考えると、当院に来て手術を受けられることにためらいを感じられると思います。おそらく、それが普通の患者さんの感情ですし、そのような事情から私も、患者さんから直接相談を受けても、当院での手術を勧めてはいません。まれにこの手術を知っている眼科の先生から直接、井上眼科に患者さんが紹介されてきますが、すべての眼科の先生がまだ、この手術をよく知っていただいてはいません。
これは、日本だけのことではなく、欧米でもこの手術はごく限られた施設でしか行われていません。

以前、この術式に関しては詳しく会報誌に寄稿した記憶がありますので、興味があればそれをご参照ください。まだ、6年ぐらいの歴史の浅い手術ですから、いろいろとわからないことも残っています。手術に関して興味があり、当院に受診のご希望があれば、逆に、この会報誌を主治医の先生に見せて、意見(この術式に賛成か反対かというようなご意見伺いのような感じでお尋ねになれば、気を害されることもないでしょうし、私よりも若い(私は44歳です)先生であれば、逆に興味をもって紹介していただける可能性もあります。)をお聞きになるのもひとつの手です。

私は、4年ぐらい前にM県眼科医会で講演した記憶がありますし、そのときにM大眼科の教授ともお眼にかかった記憶があります。が、Y先生という方はよく存じ上げません。先ほど、申し上げましたように、水晶体を全部とってレンズを縫い付ける手術はきわめて標準的な手術ですので、すでに40歳を過ぎておられるようであれば、普通に受けてもよろしいかと思います。

ただ、年齢的に若い場合、実は、眼内レンズ縫い付けの手術もそれほど長い歴史がなく、第一選択でお勧めできるものではないのが困ったことです。

それから、水晶体の偏位が強すぎる場合、リングの手術ができない場合もあります。

以上が、文面に対するご回答です。
ご参考になれば、幸いです。


徳田芳浩

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