マルファン症候群 患者と家族の会 マルファンネットワークジャパン
マルファン症候群の症状
マルファン症候群の症状は、各人各様です。
軽い症状だけの人もいれば、より重篤な症状を有している人もいます。
多くの場合、加齢とともに症状は進行します。
マルファン症候群で症状の出現する頻度の高い器官は、以下のとおりです。

骨格
マルファン症候群の患者さんは、概して長身ですらりと細く、関節がゆるんでいます。
マルファン症候群では、骨の中でも細長い骨に異常があらわれるため、腕、脚、手足の指が、身体の他の部位と比較して不釣合いに長くなる場合があります。
マルファン症候群の患者さんの多くは、顔が細長く幅が狭く、上顎の天井がアーチ状に狭くなっているため、歯並びが悪く乱杭歯となります。その他の骨の異常として、胸骨(胸の真ん中の骨)が出っ張ったり,逆にへこんだりするほか、背骨が曲がったり(脊椎弯曲)、扁平足となったりします。


マルファン症候群の患者さんの半数以上で、片方または両方の眼で水晶体(レンズ)の位置のずれ(水晶体偏位)が生じます。水晶体の位置が通常よりも上下方向または、横方向にずれることもあります。
このずれは、わずかな場合もありますが、ずれが大きく顕著な場合もあります。網膜剥離は、本症候群で起こりうる重大な合併症の一つです。また、マルファン症候群の患者さんの多くには近視があり、早期に緑内障(眼球の内部の圧力が上昇した状態)や白内障(水晶体が透明ではなくなる状態)が生ずることもあります。

心臓と血管(心血管系)
マルファン症候群の患者さんの大部分に、心臓と血管に関わる異常を認めます。
僧帽弁(心臓の左心房から左心室への入り口にある昔の僧がかぶったドーム状の帽子の形をした2枚の弁膜からなる弁)の形成が悪く、大きく軟弱な場合があり、心臓が鼓動する際に異常な弁運動(僧帽弁逸脱)が起きます。場合によっては、医師が聴診器を用いて聴取することのできる「心雑音」が、弁から漏れた血液の流れによって生ずることもあります。わずかな漏れでは何の症状もありませんが、弁から漏れて逆流する血液が多い場合には、息切れや疲労、動悸(非常に速いあるいは不規則な鼓動)の原因となる場合があります。
結合組織が完全ではないために、大動脈(心臓から身体中に血液を運ぶ大血管)の壁が弱くなり、引き伸ばされて、大動脈拡張といわれる膨らみを生ずる可能性があります。大動脈拡張は、大動脈が裂けたり(大動脈解離)、破裂する危険を増大させ、重篤な心機能障害や、時に突然死の原因となることもあります。

神経系
脳および脊髄は、結合組織からなる硬膜と呼ばれる膜に包まれた液体に囲まれています。マルファン症候群の患者さんは年齢を重ねるにつれ、しばしば硬膜が弱くなって引き伸ばされ、そして下部の脊柱を圧迫し、脊髄を取り囲む椎骨を削っていきます。この状態は、硬膜拡張と言われています。これによって、軽い不快感を感じるだけの場合もありますが、腹部全体に拡散するような痛みを感じたり,脚の疼痛、麻痺、筋力低下などを来たす場合もあります。

皮膚
マルファン症候群の患者さんの多くは、体重の変化がなくても、皮膚に伸展線(急激に肥満した場合や妊娠した場合に腹部・腿・乳房などに生ずる線状の皮膚亀裂。妊婦の場合は妊娠線という)が発生します。伸展線は、どの年齢でも生じ得ますが、健康に害をおよぼすことはありません。しかし、マルファン患者さんは、腹部または鼠径部(股のつけね)のヘルニア(腸の一部などが皮膚の下に出てその部分が膨らむ)を起こす危険も高くなっています。


結合組織の異常により、肺胞(肺に入った気管支が枝分かれした末端の小さな風船状の部分)の弾力が弱くなりますが、マルファン症候群の患者さんでは通常、肺に関わる大きな問題は生じにくいです。しかし、肺胞が伸展し膨張しすぎると、破れて気胸(P60参照)を来たす危険は増大します。また、マルファン症候群の患者さんでは、いびきや睡眠時無呼吸(短い周期で呼吸を止めることを繰り返すのが特徴の睡眠障害)のような睡眠に関連する呼吸障害が見られることはあまりありません。


マルファン症候群とは マルファン症候群と遺伝 マルファン症候群と診断されたら マルファン症候群の治療と管理