狂牛病と人工器官について 〜力を合わせて情報収集〜 (2001.10.18)


9月、日本でも狂牛病のウシが見つかりました。マルファン症候群の人は、病院で手術を受けたり処置を受けたりする機会が多いため、医療品に使われているウシ製品の安全性についても、とても気がかりです。
医療分野でウシからのコラーゲンやゼラチンが使われているのは、人工血管や人工弁(コラーゲンでコーティングされています)などの人工器官をはじめ歯科分野、抗生剤やほかの薬剤注射のための溶解剤など多数あり、96年以前には手術の縫合糸でウシの腸からできている製品もありました。

1,いままでの経緯と医薬品販売会社(2社)から得た回答

10月4日、事務局に会員のSさんから、問い合わせメールを頂きました。
「私は平成10年1月に解離性大動脈瘤により、人工血管と人工弁に変えています。その時、医者から聞いた話を今、思い出したのですが、人工血管は繊維を編んだものでできており、その隙間を埋めるために牛の骨髄を精製したものをしみこませてあると聞きました。現在、狂牛病(BSE)が世の中を騒がせていますが、上記のことは、大丈夫なのでしょうか?」
これについて全く情報がありませんでしたので、Sさんから直接、医薬品販売会社へ問い合わせていただきました。Sさんは自分の人工血管のロット番号等把握してなかったため、ロット番号は付記しないで問い合わせをしました。
Sさんへの日本ライフライン株式会社からの回答はこちら (10/10)

また、Kさんも、販売会社へ問い合わせをしました。Kさんは、97年3月に胸部大動脈瘤手術を終え、病院より「特定医療用具登録用紙」を受け取って、医薬品会社に自分の住所氏名を登録していました。この書類には、植え込み製品名、カタログ番号、ロット番号、植え込み年月日及び部位が記入してあります。住所登録先の会社は(株)ゲッツブラザーズ薬事管理課でしたが、今回の狂牛病についての安全情報は送付されてきていません。そこで10月9日、電話で問い合わせをしました。電話では、氏名、手術した時期やロット番号は一切聞かれず、それでもすぐに答えが返ってきました。
「人工血管の繊維のすきまは、ウシのコラーゲンやゼラチンなど、皮下組織を使ってうめられています。その会社の製品によってウシのどの部分が使われているかは違ってきますが、骨髄は使用していません。うちの製品は、皮下コラーゲン、ゼラチンのみ使用しているので、今問題になっていることとは関係ありません」
Kさんは、製品名やロット番号を伝えていないのにもかかわらず返答されたため、この言葉ですっかり安心というわけにはいきませんでした。そこで改めて、ロット番号と手術年月日を明記して、ゲッツブラザーズにメールで尋ねました(10/10)。すると今度は、Kさんが手術する半年以上前に、この製品の販売が別の会社(ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)に移行しているので、問い合わせメールは、ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社に転送した、という返事がかえってきました(10/11)。4日後、ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社から回答がきました。
Kさんへのボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社からの回答 (10/15)
(10月11日より予防的な措置として回収を開始しているという内容)

2社からの回答はいずれも「人工血管は安全である」でした。
しかし消費者としては、「安全であるという証拠」を示してもらわないと、心から安心はできません。
企業には消費者に情報を開示し、安全であるという科学的な証拠を示す義務があります。

2,MNJの対策  〜力と知恵を集めて情報収集〜

 1,品質記録の開示を求める

自分に植め込まれている製品名やカタログ番号、ロット番号、手術をした年月日や部位を明記し、販売会社やメーカーに問い合わせします。そして原料となったウシの原産地、飼育地、製造のためにどの部位をとりだし、どういう過程で精製したかという記録(製造の履歴をたどる事のできる品質記録の公開)を求めます。
数多くの企業から情報を得るには、ひとりでも多くの方の協力が必要です。

 2,精製過程について更に詳しく尋ねる

精製工程が基準以上であれば、異常プリオンも、限りなく0に近づくと言われています。そこで、詳しい精製工程や、どのようなものを不純物として取り除いているか等の精製度を、尋ねます。

みなで協力して、情報収集しましょう。
人工血管、人工弁に限らず、体内に移植する形の人工器官には、癒着を防ぐためゼラチンやコラーゲンが使われていることがあります。 整形外科手術や眼科手術で人工器官を植め込んだ方も含め、みなで医薬品メーカーに情報開示を求め、管理体制が万全であるよう求めましょう。

情報収集に協力していただける方は、事務局(info@marfan.gr.jp)まで、ご連絡ください。

そのほか、医薬品と狂牛病に関する情報をお持ちの方は、是非お知らせください。


参考ページ
BSE清浄化のための国際的枠組み
厚生労働省「牛海綿状脳症(BSE)関係」ホームページ
ヨーロッパのゼラチン製造業者のレポート(英文)
実験研究の結果は、ゼラチンの製造処理が伝染性海綿状脳障害あるいはウシ伝達性海綿状脳症(TSE/BSE)の感染性を10億分の1の範囲で除去、もしくは消滅させる能力があることを示しています