ＭｅｄＱｕｅｓｔ： Ｑｕｅｓｔｉｏｎｓ ａｎｄ Ａｎｓｗｅｒｓ
医学質問箱： 質問と解答
今回のＮＭＦの医学質問箱は、2007年 7月のＮＭＦ年次総会であった質問を取り上げます。ＮＭＦ会員はだれもが来たる次の総会でのカンフャレンスに出席し、マルファン症候群の各方面の専門家を交えたスモールグループ勉強会に参加することができます。
■ マルファン症候群は必ず遺伝するのですか？
マルファン症候群の方のお子さんは、50％の確率で疾患を遺伝します。しかし、しばしば、新たな遺伝子の欠陥（突然変異）が精子や卵子の形成中に起こり、マルファン症候群を示す乳児が生まれることもあります。このようにして、マルファン症候群を示していない両親からマルファン症候群を示す乳児が生まれる確率は
10、000 分の１なのでが、おおよそその25％は妊娠中の突然変異によるものなのです。マルファン症候群は常染色体の優性遺伝性疾患とされており、世代を飛び越えて遺伝しないことを意味しています。もし、子供が突然変異によるマルファン症候群のように思われないのであれば、マルファン症候群であると診断される伯父、叔母、従兄弟あるいは祖父母がいるはずで、子供の両親についてもさらなる検索が勧められます。
■ マルファン症候群の子供に水晶体の亜脱臼は一般に認められますか？
水晶体（レンズ）の亜脱臼がマルファン症候群のお子さんに一般的に認められるということはありません。しかしながら、身体への外傷、例えば相手と接触する機会の多いスポーツや特別な気圧（深海ダイビングはだめ！）などは避けるべきです。
■ マルファン症候群には運動技能を鈍らすような影響がありますか？
マルファン症候群が直ぐに運動技能に悪影響を及ぼすことはありません。実際、マルファン症候群がありながら、アメリカの女子バレーのオリンピック選手になったヘイマンのような世界的な運動選手もいます（注釈：彼女はマルファン症候群であることを知らなかった、換言すれば、知っていれば競うような運動種目には参加しなかったかもしれません）。疾患の特質からすれば、手書きのような運動技能にはある程度は影響するかもしれません。これはマルファン症候群の直接的な影響ではなくて、マルファン症候群に起因する指の進展性や筋肉発達などの機能によるものだからです。
■ 冠動脈へのステント留置術はマルファン症候群があっても安全にできますか？
（狭心症の治療に用いられる）ステントは網目管状のもので、狭窄を解除した冠動脈内に留置することで血流を保ち外壁を内圧やさらなる拡張からか守っています。マルファン症候群の人にステントーグラフトを用いた例数は非常に限られていますので、これらの効果や安全性を議論するには不十分です。結論としては、ステントーグラフトはマルファン症候群や類似疾患の人に未だ勧められません。
■ 大動脈基部の拡大を測定するのに最も適した検査診断方法は何ですか？
大動脈を評価するのに最も一般的に用いられているのは、以下のような検査法です。
＊経胸壁超音波法は、大動脈弁のほか心臓に近い大動脈基部（根部）を含めたすべての心臓 構造を調べることができます。
＊ＭＲＩあるいはＣＴ検査では、大動脈のどの部分でも査走検査できます。
＊経食道超音波法は、心臓弁膜のほか上行、下行大動脈を調べることができる特別なカテー テルタイプのプローブ（検出器）を有する検査法です。
担当医師は最も着実に実施できて専門的にも判定しやすい検査方法を選ぶことでしょう。通常の胸部単純Ｘ線像や心電図検査は大動脈の拡大測定には役立たないということを知ることも大事なことです。
Ｉｓ ａ Ｒｅｓｅａｒｃｈ Ｓｔｕｄｙ Ｒｉｇｈｔ ｆｏｒ Ｍｙ Ｃｈｉｌｄ ｏｒ Ｍｅ ？
医学研究調査は私の子供や私自身にとって正しい行為なのでしょうか？
国立心肺血液研究所（ＮＨＬＢＩ）、臨床試験専門研究員、ビッキ−・ペンバートンさんによるもの。
1984年９月の出来事を振り返って鮮烈に思い出すことができます。私にちっちゃな未熟児の息子が生まれ、急ぎ病院近くの新生児集中治療室に運ばれたのです。分娩処置中は赤ん坊をみれませんでしたが、後から見せられた写真では外見上はちゃんとした形の赤ん坊でした。しかし、チューブや線やモニター類があって、あの子の内側では未熟な肺が弱っているのを知らせているようで非常に心配でした。
新生児専門医（未熟児の専門医）が私の病室にきてマッチュー君の不全状態について話し合いました。医師はまた、界面活性剤（サーファクタント）と呼ばれる新薬の臨床研究試験についても説明しました。新薬は皿洗いに用いる洗剤のようなものでした。未熟児の肺を進展しやすいようにして換気しやすいようにするようでした。臨床研究は私の赤ん坊が新薬かプラセボと呼ばれる偽薬を選択するように仕組まれていました。私は臨床試験を受ける方を選択しました。その時の切羽詰まっての悲痛や家族や友達や病院関係者に相談した私の優柔不断さを思い出しています。しかし一方では、この事が私の赤ん坊を救ったのであり、将来も他の未熟児を救う事になるものと考えていた事も思い出しています。
多くのアメリカ人は臨床試験のことは聞いていて、医学研究が医師にとって病気をより良く理解し健康を増進するのに役立つこを熟知しているように思えます。臨床試験志願者のための情報研究センター（CISCRP）の報告によりますと、国民の94％が臨床試験に参加することが非常に重要であると理解しているものの、ほとんどの人は決して臨床研究試験に参加していません。74％の人は臨床試験の過程についての本当の知識は持っていないといわれています。このことが研究試験に参加するかどうかを決めるのを困難にしているのです。
小児心臓ネットワーク（ PHN）が主導するマルファン症候群におけるロサルタン対アテノロールの臨床試験には多くの人達が参加を決めています。試験は2007年
2月には始まりました。この 7月までに 109人の小児と成人が登録しました。各家庭では追加訪問や電話聞き取り調査にも同意いただき、日記を付け、薬を与薬し、長距離の旅行することにも。これら家族の参画がマルファン症候群の人たちの長期の健康増進に役立つのです。最近のカンファレンスで
PHN研究コオーディネーターが試験参加者の積極的な心構えと参加しているのだという献上の精神を称える発言がありました。ある場合には、今すぐには参加できないかもしれないけれど、後日再びスクリーニングに訪れることに同意した人もいます。
ホルター心電図（心臓のリズムを連続して記録する機械で、日常生活での活動中の24時間通して装着する）を装着するのは好ましい事ではないことは誰もが知っています。しかし、試験に参加した一人のティーンエージャーが効率判定試験の助けになるということで同時に二つのモニター機器を装着することに同意しました。沢山の粘着テープとともにです！ 他の家族では、
6歳の双生児がこの試験に参加しました。一人が溶液剤を飲めば、もい一人は錠剤を飲むといった具合です。副作用を追跡調査し、異なる試験薬を与えて、同時に二人の活発な子供の活動能力を監視することは計り知れない家族の献身と独創性が必要となります。
私の息子マッチューは界面活性剤（サーファクタント）の臨床研究試験では偽薬（プラセボ）の組になりましたが、私たちの参加で医師たちが未熟児のためにより良い治療を施すのに役立ったのだと言って喜んでいます。これらの臨床試験研究の直接的な結果として、この20年で呼吸窮迫症候群を示す未熟児の死亡率が50％から10％に減少しています。
献身と要望を通して、マルファン共同体ＮＭＦでは、特別な疾患の人々のより良い治療法を見付けるための、あるいは健康増進を計るための重要な質問に答える機会を持つことになりました。もし、あなたがマルファン症候群の研究に関しての詳しい情報がご入用でしたら、どなたでも、最も近いどのサイトからでもご連絡下さい。
http//www:pediatricheartnetwork.org/marfanforparents.asp
or call the NMF at 800-8-MARFAN ext.26.A
Ｐａｉｎ Ｍａｎａｇｅｍｅｎｔ：
Ｔａｋｅ ａ Ｍｕｌｔｉ−Ｆａｃｅｔｅｄ Ａｐｐｒｏａｃｈ ｆｏｒ Ｒｅｌｉｅｆ
疼痛の処置： 疼痛緩和のための多角的取り組み
Ｐａｉｎ 疼痛とは：（ステッドマン医学辞典によれば）
現実のまたは潜在的な組織の損傷に伴う、あるいはそれに関連しての不快な感覚あるいは情緒的な体験。
マルファン症候群の多くの人々が疼痛を経験しています。ある人にはちょっとした不都合にすぎないことでも、ある人にとっては毎日の生活に強くかかわる恒常的な問題なのです。会員のために疼痛に関する情報を準備し、いかに疼痛を処置するかについて、スタンフォード大の麻酔学教室、疼痛管理科のシーン・マッキー博士に
7月の年次カンファレンスの一般医学講座で語っていただきました。
マッキー先生によれば、疼痛の出現が医師を訪ねる切っ掛けになっているようです。５千万人以上のアメリカ人に疼痛があり、このことで失業するのが最もな大きな理由担っています。このように疼痛のために、直接あるいは間接的に医療費として2000億ドルが出費されています。 生活の質の上では疼痛の影響も大きなものです。慢性的な疼痛は心配や怒りなど陰気な感情を生み出します。また睡眠にも関係して、日中の疲労感を助長します。このこはまた。勤労と余暇との良いバランス関係を引き裂き、家族、友人、同僚などの関係をも壊してしまいます。
マルファン症候群によくみられる疼痛の原因
マルファン症候群にみられる背部痛の原因の一つは、その60％以上の人に認められる側弯症です。これらの側弯症には、通常の場合に比して関節支持器の効果が少く（17％対45−75％）、12％の方には手術が必要となります。
脊椎の回りの硬膜嚢の膨化などの脊髄硬膜の拡張がマルファン症候群にみられる背部痛のもう一つの原因となります。これは下方の背部痛、頭痛、上肢痛や性器・直腸痛を引き起こします。
マッキー先生によれば、多数の痛みは特発性で、原因不明とのことです。
慢性疼痛を管理するための数々の手段
慢性疼痛を上手に治療するには身体的療法やリハビリテーション、心理的なサポート、処方薬や治療などを含む多角的な試みが必要です。疼痛に対する恐れを巧みに調整することは痛みが原因で起こる肉体的な不快を緩和すると同じように大事なことです。ここでいう身体的療法とは体の構造や人間工学について学習し、筋肉群を強めるように訓練すること、職業に関するカンセリングや疼痛を和らげる氷／熱／マサージ超音波など器具までを含みます。
心理的なサポートは健康状態を強めること、配偶者の関与、疼痛の調節に効果的と期待される薬剤、催眠や瞑想それに（血圧、脈拍などの）生体自己制御のような応答治療などを含みます。
疼痛の治療に用いられるものの中には、神経ブロック薬（硬膜外ステロイド、中間枝ブロック、交感神経ブロック、末梢神経ブロック薬）、脊髄内アヘン注入、脊髄刺激や手術が含まれます。疼痛を緩和するのに効果があると記載されている治療薬は多種多様です。中には、アセトアミノフェン、アヘン、抗鬱剤、抗癲癇薬、抗不整脈薬などもあります。疼痛治療薬に関し１て記載する時には、医師は治療薬がどのようにして沢山の受容体に働くのか、高治療率（中毒量に対する治療発現量の比率）、低い副作用量と低い潜在的な相互作用などを考慮します。幾つかの治療を受けているマルファン症候群の人々にとっては、疼痛のための薬が他の処方薬と相互作用を有していないということを確実にすることが大事なことです。
慢性的に常時疼痛を覚える人は、最も効果的な疼痛緩和が得られるように多角的な診断治療を求めるべきです。疼痛緩和の方法を見付けることで、生活の機能性も質も向上させ得るのです。
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