マルファン ネットワーク ジャパン

小児慢性疾患を考える1

緊急開催/政策提言
小児慢性疾患を考えるフォーラム
参加報告書


MNJにとって耳新しい表記のフォーラムに参加してきました。今まで、この件に関して関連のホームページを紹介したり、ごく短文で主旨説明がされたりということで、あまり系統的な説明がなされていなかったように思われます。少し長文になってしまいそうですが、ここで、このフォーラムの主催団体のことや、フォーラム開催の意味、MNJとの関わり、なども含めて参加報告をいたします。


1, 緊急開催/政策提言 「小児慢性疾患を考えるフォーラム」の予備知識
Jの会員の皆様に、このフォーラムの内容をご理解いただくには若干の予備知識が必要になると思いますので、はじめに主催団体のことなどを説明しておきたいと思います。分かっていらっしゃる方は読み飛ばしてください。

(1)、主催団体について

「小児慢性疾患を考えるフォーラム」(以下「フォーラム」と略します)は、特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク(以下「支援ネットワーク」と略します) 親の会連絡会(以下「親の会」と略します)の主催です。(支援ネットワークのホームページは http://www.nanbyonet.or.jp です。)
このホームページに掲げてある紹介文には、支援ネットワークのことを下記のように記していますので引用(一部省略してあります)致します。


原因が分からなかったり、治療法が未確立などのいわゆる子どもの難病は500種類を越え、全国で20万人以上の子どもたちが難病とたたかっています。
これらの子どもたちは、長年にわたって治療を続けなければならず、また病気の後遺症として障害を併せ持つことも少なくありません。
私たちは、そうした子どもたちと家族を支えQOL(いのちの輝き)を高めるために、大勢の人達とネットワークをくみ、次の活動を進めています。
主な活動
  1. こどもと家族のQOL向上のために
    ネットワーク電話相談室の運営、こどもの難病シンポジウムの開催、サマーキャンプ「がんばれ共和国」の開催など。
    *QOL=quolity of life
  2. 医療・教育・福祉の向上のために
    病弱教育セミナーの開催
  3. 親の会活動支援
    親の会連絡会の開催、親の会の研修を実施、各種学会等での「親の会展示・PRコーナー」の開設、親の会の設立と運営に関するコンサルティング
  4. 集いの場の提供
    「亡くした子どもの遺志を引き継いだ人達の集い」の呼び掛け
  5. 広報活動
    機関誌<がんばれ!>の発行、シンポジウムとキャンプの報告書を刊行、「親の会ハンドブック」の出版、「疾病理解のためのハンドブック」製作、難病の子どもを知る本の製作
  6. 国際交流
    アメリカのサマーキャンプへの日本の難病児派遣( ポール・ニューマンキャンプ )

支援ネットワークは、この活動に賛同し支援してくださる、個人の正会員、個人・法人・非営利団体などの賛助会員、又機関誌の購読会員などで構成されています。患者の関係では、対象の患者は小児ですから、その親(保護者)が主体になり、現在40の親の会が参加しています。(MNJは、平成13年7月17日にicemaxさんのご尽力で支援ネットワークに賛助会員として入会しました。つまり、私たちはこのフォーラムの主催者の一員です。)
支援ネットワークの活動基盤は、1968年の「未熟児に対する入院医療費補助」から始まり、国の小児難病対策事業として1974年にまとめられた「小児慢性特定疾患治療研究事業」(以下「小慢」と略します)対象疾患と小慢への指定を望んでいる疾患の患者・患者会(親の会)にあります。
親の会は、支援ネットワークの主な活動の3番目に記載されているように、支援ネットワークが行っている活動の一つで、組織とか機関の名前ではなく「会議」の名前であると、(3)で説明いたします「小児難病親の会ハンドブック2002」(以下「ハンドブック」と略します)の序文で紹介されています。どのような団体が参加しているかは 2、で説明いたします「親の会共同アピール」(以下「アピール」と略します)の最後に列記してありますのでご参照下さい。

(2)、「小児慢性特定疾患治療研究事業」について

ここで、このフォーラムを報告する上で最も重要な「小児慢性特定疾患治療研究事業」に対する説明をしたいところですが、これを始めてしまうと超長文になりそうなので、詳しい内容の説明は後日にゆずります。しかし避けては通れない事柄なので、ごく荒っぽく概略を書いておきます。
厚生労働省の事業である「小児慢性特定疾患治療研究事業」の対象疾患は、「治療に相当の期間を要し、医療費の負担も高額となり、またこれを放置すると児童のの健全な育成を阻害する」ものであるとされています。現在、10の疾患群、約530の疾病で18歳未満が対象になっており、平成10年度では全国で111,087人が給付を受けております。平成13年では約13万人になるそうです。国の予算規模は100億円、また地方自治体からも同事業対象の疾患に対して約100億円の支出があるそうですから、合計すれば200億円の事業となり、厚生省としても大きな事業の一つといえます。予算配分は、「治療研究事業」という名前がついていますが、主として患者家族の医療費の負担軽減が目的となっています。
いずれにしても、この事業そのものの存在が、小慢対象の患者家族、また病弱児や障害児をもつ家族、ひいては日本の社会にとっても、人権を重視した差別のないやさしい社会にしていく大きな「とりで」の役割を果たしているようです。
今回のフォーラムが、「緊急開催/政策提言」と銘打たれているのは、この制度が国の構造改革のスタートに伴い、予算の削減、ゆくゆくは存続の危機を迎えていて、「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」(以下「検討会」と略します)が開始された今、まさに支援ネットワークの総意で、親の会の願いをこの検討会に届けたいというためのものだからです。
こうした時期に、MNJが支援ネットワークに参加することは、私たちの4つの目的を達成していく一つの道筋でもあると同時に、今後の私たちの行っていくべき活動の参考になると考えられます。
それから、もっと深く勉強した上で発言しないといけないことですが、小慢の10の疾患群の中には、「先天性代謝異常」という項目がありますので、マルファン症候群がこの事業対象疾患として指定されていてもおかしくないということを付記しておきます。

(3)、「小児難病親の会ハンドブック2002」について

MNJが支援ネットワークに入会するにあたって話題にのぼった「小児難病親の会ハンドブック2002」の目的は、同ハンドブックの2000版を発行した時の案内文によれば、「難病のこども支援全国ネットワークではこの程、小児慢性特定疾患等の親の会を中心に、病気や障害についての簡単な説明と、親の会の活動内容、会の連絡先などを掲載した「小児難病親の会ハンドブック2000」を、親の会連絡会の参加団体等と共同で製作し、小児慢性疾患の申請窓口である全国の保健所、小児病院、大学病院に配布しました。それぞれの患者・家族への支援のために利用してもらうことを目的としています。」としています。「2002年版」の内容は、親の会の共通の願いである2、で説明いたします「アピール」と、それぞれの参加各団体の病気の特徴や、会の内容及び入会案内で構成されており、「ハンドブック2002」にはMNJも掲載されております。
また、2002版の序文の最後は「”親の会連絡会”に参加している団体においては、それぞれの病気や障害のおかれている状況は異なるものの、懸命に生きている子ども達の人権を尊び、QOLを高めるため、子どもの病気や障害を社会の人々に正しく理解してもらうことが重要であるとの共通認識を持っており、この小児難病親の会ハンドブック2002は、それぞれの会の活動を紹介させていただいています。
この冊子の内容で決して十分とはいえませんが、保健や福祉、教育、医療に携わる方々に、子どもの病気や障害を正しく理解していただき、より良いご指導をお願い申し上げる次第です。本冊子の内容、会の活動について、お問い合わせやお気付きの点、ご意見などは難病のこども支援全国ネットワークまたは各会へご連絡いただければ幸甚に存じます。」と結んでいます。
この考え方は、MNJの4つの目的に合致しており、支援ネットワークに入会したことが正しい選択であったことを改めて確認いたしました。
また、ここに掲載される意味は非常に大きく、今までMNJはホームページを通じた広報と活動が中心でしたが、ホームページを見ることができない方たちにもMNJを知ってもらえる機会が格段に広がったことと、ハンドブックが小児医療や行政・教育の現場で活用されて行くならば、その医療機関や、行政機関または教育機関の中にいるマルファン患者をコアにしたMNJのコミュニティが形成されていく可能性もあると考えられます。
「アピール」に関しては、このアピールを採択した会議にMNJから出席者がいなかったため、MNJ会員の目に触れるのは今回が最初だと思いますが、私たちの4つの目的を細分化し、さらに奥深く追究した内容になっていると思います。
ハンドブックの序文で、アピールのことを「国の構造改革のスタートに伴い、長く難病の子どもの医療を支えてきた『小児慢性特定疾患治療研究事業』が存続の危機に陥りました。私達は、このすばらしい制度を今後も安定的に続けていただくためには、この制度を法制化する以外に方法はないと、国を始め各方面に地道に働きかけを続けてまいりました。
今回、『小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会』が発足し、制度のあり方を含め検討が始まったことに親の会各会としては大きな期待を寄せているところです。
そこで私達は、子ども達がより良い医療・教育・福祉を受けながら、地域で地域の人々とともに生きていける新しい仕組みはどのようなことか、親達の考えを共同アピールにまとめてみました。是非ご一読いただき、ご意見等もお寄せいただければ幸いです。」と紹介しています。この文章はこのハンドブックを利用していただく「保健や福祉、教育、医療に携わる方々」に読んでいただくための文章ですが、私たちMNJも遅ればせながら「小慢」について学び、このアピールの内容を改めて話し合ってみる必要があるのではないかと思います。
また、「このすばらしい制度を今後も安定的に続けていただくためには、この制度を法制化する以外に方法はない」としていますが、「事業」と名が付いている場合は、「終了」があるそうで、「終了」させないためには「法制化」させて「法律」として安定した状態にする必要があるそうです。このへんの行政用語の区別がつかない私としてはわかりにくいところですが、あらっぽく言い換えれば、現状の国のやり方はいつでもやめられる「慈善事業」的な発想なので、「弱者」の人権を認め、人間として暮らしやすい国にするために国家的な概念を育てていこうよ、この日本に・・。と言っていると理解しました。

(4)、緊急開催/政策提言 「小児慢性疾患を考えるフォーラム」

前項まででそれぞれ不十分ながらも予備知識を得ていただいたという前提で、会場で配布された資料の挨拶文とレジメを引用してこのフォーラムの主旨とプログラムの流れを紹介いたします。

レジメより全文引用
「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」がスタートしました。私たちは親の立場から、子供たちのよりよい医療、福祉、教育そして、社会を考えてきました。子供たちは病気を持ちながらも地域の中で懸命に生きています。医療費を補助するだけでない、病気の子供たちを社会のシステムの中に組み入れて、みんなで支え合う、そんな新しい小児慢性特定疾患の制度・仕組みをどのように考えるのか、親たちのみでなく関係するさまざまな立場のみなさんと議論するためにこのフォーラムを企画しました。

日 時:平成13年10月27日(土)13:00〜16:00
場 所:日本出版クラブ会館
主 催:特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク 親の会連絡会

プログラム
開催の趣旨説明
小林信秋(特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク専務理事)
親の会提言発表
山下泰司(日本水頭症協会代表)
パネルディスカッション・全体討論
パネラー
竹内公一(胆道閉鎖症の子供を守る会副代表)
長谷川雅子(XPヒマワリの会/色素性乾皮症)
堀越晶子(つくしの会/軟骨無形成症)
二瓶健次(国立小児病院神経科医長、難病のこども支援全国ネットワーク監事)
武田鉄郎(国立特殊教育総合研究所病弱教育研究部主任研究官)
谷口 隆(厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長)
座 長
鴨下重彦(賛育会病院院長)





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