マルファン ネットワーク ジャパン
運動における注意点は?の Q&A


Q-01 運動と大動脈への負担について

私は、大動脈弁を人工弁に置換しており、大動脈、基部上行大動脈、大動脈弓部、胸部下行大動脈(横隔膜の辺り)までを人工血管に置換済みで、腹部大動脈は現在解離しており、大きさは40ミリ程度です。現在は、凝固治療や降圧剤治療を行っております。
ここで医療アドバイザーの先生に質問なのですが、私的には現在、適度な運動(有酸素運動)を行っています。
ウォーキングやサイクリングで身体に無理のない範囲で行っています。
重い物を持ち上げるようなトレーニングは、血圧を上げるので全く行っておりませんが、最近腹筋がかなり弱くなってきたなと思い、身体が辛くない程度の範囲で腹筋運動をしています。
このような運動は、大動脈に負荷をかけるものなのでしょうか?

<服用してる薬>

ワーファリン 1mg (朝:2錠,夜1.5錠)
レニベース 5mg (朝:1錠)
バイアスピリン 10mg (朝:1錠)
酸化マグネシウム 散剤 (朝:1,昼:1,夜:1)
ガスターD 20mg (寝る前:1錠)

<血圧>

最高血圧 125前後
最低血圧 70前後
脈拍 65前後

A-01-1
これまでの手術、随分大変であったでしょうが、経過良好で何よりです。さて、お尋ねの軽い腹筋運動ですが、結論から云うと、通常の有酸素運動では、余り問題はないかと思います。しかしながら、時もすれば、少々頑張ってみたりすると、血圧が上昇し、大動脈にかかるストレスが急に上昇しますので御用心下さい。現在、腹部大動脈径が40mmということですから、運動量の如何にかかわらず、徐々に瘤径は増強してゆくものと思われます。冷酷な云い方かも知れませが、生きてゆく限りは最低限の血圧は必要で、この為、大動脈は常に圧力を受けていますから、瘤は小さくなることはありません。瘤径の拡大を遅くすることは日常生活では可能ですが、全く寝ている生活では人生の意義もないでしょう。急激な血圧の上昇を避ける、すなわち、全力の筋肉運動は避ける、便秘をしない、風呂は温めで短めに、成る可く怒らない(困難ですが)等の心懸けが大事です。重要なことは、定期的に(少なくとも6箇月毎に)CT検査を行い、瘤の増大傾向が認められたならば、最終手術を予め予定された方がいいと思います。

神戸大学医学部附属病院心臓血管外科 教授
大北 裕

A-01-2
筋の収縮には
1.伸張性筋収縮
2.収縮性筋収縮
 の2種類があります。

1.は階段を下りるときに体重をかけた前脚の膝は力をいれないとがっくりと折れていきますが、これを食い止めるように大腿前面の四頭筋が長さを伸ばされながらも収縮して膝の曲がりをゆっくりと止めてくれています。このときの収縮様式を伸張性筋収縮といいます。この収縮様式を利用した訓練は血圧の上昇が大きく危険です。腹筋の訓練では仰向けにねて下肢をまっすぐした状態で斜めにあげてキープし、下肢がゆっくりと床につくようにしていくのをこらえる訓練がこれにあたります。

2.は、通常の筋収縮で、力こぶをつくる様式です。これにも、筋肉の長さがかわらないようにおこなう等尺性筋収縮と、負荷(おもり)を一定に保つ等張性筋収縮、関節の動きのスピードを一定に保つ等速性筋収縮とあります。このなかで、血圧の上昇を最小限に抑えることができるものは、等速性筋収縮ですが、コンピュータ制御マシンでないとできないので、一般的ではありません。のこる二つの中では、等尺性筋収縮は、力み過ぎないようにすれば危険は少ないといえます。

まとめますと、腹筋の場合のおすすめは、いかのとおりです

1.仰向けに寝て両膝を立てて、臍の前で手を組んで休みます。
2.ふーと息を吐きながら、首をおこし臍を見ます、ここで止めますが、息を止めてはいけません。(血圧の上昇を抑えるためです)
臍を見る状態で静止する時間は、腹筋の強さによりますが、無理しないことが重要です。
3.疲れたらゆっくりと1.の状態に戻します。
4.これを繰り返します。

一度に無理して多くやるのではなく、1日に何セットも繰り返し、長続きさせましょう。
not too much,not too soon
やりすぎず、焦らずに。

増本整形外科クリニック
増本 項

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