マルファン ネットワーク ジャパン
マルファン症候群についてのQ&A
Q-04
「Beals症候群とMarfan症候群の違いは?」
MNJの記事が掲載された「地域保健」を見た保健師さんから、事務局にMarfan症候群とよく似た《Beals症候群》について以下のような質問が届いたため、アドバイザーの沼部先生に回答していただきました。

「 健康相談で新生児なのですが、1ヶ月健診で「Beals症候群」といわれた児の親から相談がありました。肺形成不全、側湾、頻脈等の症状があります。インターネットで検索すると、マルファン症候群と出てきます。同じ病気のことなのでしょうか。もしお分かりになったら教えて下さい。」

A-04
Marfan症候群が,15番染色体の長腕のq21.1という場所にあるフィブリリン1という遺伝子の異常によって起こるのに対して,Beals症候群は,5番染色体の長腕のq23-q31の間にあるフィブリリン2という遺伝子の異常により起こります.従って,原因は全く別の遺伝子の異常によるものであり,症状は似ていますが,別の疾患です.生まれてから幼児期〜小学校低学年までは,両者の区別ははっきりしない場合があります.しかし,経験のある専門医であれば,ある程度,鑑別をすることが出来ます.例えば,どちらの症候群もすらりと長い指が特徴的ですが,Beals症候群では,指が真ん中の関節で曲がって硬くなっていることが少なくありません.この症状は乳児期に改善することが多いようです.また,Beals症候群では,特に新生児期や乳児期早期に耳が折れ曲がったような感じになるのが特徴です.必ずしも,耳が折れ曲がっているという訳ではありませんが,とても柔らかな耳で,耳を触った感じだけで,専門家であれば判断が出来る場合もあります.いずれの症候群も年齢によって現れる症状が少しずつ異なって来ますので,新生児期早期に診断がされた症例では,小児期から成人期に至るまで,それぞれの年齢に応じた定期的な健康診断が必要となります.また,すらりと長い指などを特徴として,いずれかの疾患の疑いをもって,定期的にフォローされているお子さんでも,その成長の過程において,他に何の異常も認められず,いずれの疾患でもないことが判明する場合もあります.たまたま,一昨日も新生児の診察の依頼があり,Marfan症候群の疑いが強いと診断したお子さんがおられますが,新生児期には,指の症状くらいしか目立たない場合も少なくありません.将来的な合併症などを考えると,疑いのある時点でMarfan症候群と考え,定期的にフォローをして行くというのが,基本的な方針になると思います.Beals症候群でもMarfan症候群に類似の大動脈や心臓の弁の症状が出ることがあります.誤解のないよう,念のため,申し添えます.
(2003.6)
学校法人東京医科大学 総合情報部情報システム室 室長
東京医科大学 医療情報学教室
東京医科大学病院 小児科 沼部 博直

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