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状況に対する心理的な適応としての「コーピング」

マルファン症候群である、なんらかの症状がある、手術や薬物治療が必要だ、といった状況を事実として受け止め自分なりに心理的にその状況に適応していくことを、心理学の用語で「コーピング」と呼ぶことがあります。コーピングのスタイルは人によって異なります(表2)。同じ人でもコーピングしていく事柄や時期によってコーピング・スタイルが違う場合もあります。いろいろなコーピングのスタイルがあり、正解はひとつではないのだと知っておくことは重要です。
たとえば、情報を集めることで気持ちが落ち着くタイプの人もいますし、仲間と一緒に泣くことで気が楽になるタイプの人もいます。親子や夫婦の間でコーピング・スタイルが違うこともあります。子どもがマルファン症候群と診断されたときに、本やインターネットで調べてばかりいる夫と泣いてばかりいる妻は、お互いに相手は自分のつらさを理解してくれないと思っているかもしれませんが、これはコーピング・スタイルの違いなのであってふたりとも同じように心配な気持ちを持っているのだとわかれば、夫婦喧嘩が減るかもしれません。MNJのような場で他の仲間と交流することがコーピング上非常に役に立つ人もいれば、ひとりでじっくり考えるほうがいいと感じる人もいます。
ひとりひとりが状況に応じて、そのときの自分にあった適切なコーピング・スタイルをあれこれ試してみるのもよいかもしれません。家族や友人の中で、お互いのコーピング・スタイルについて話し合うことも有意義です。コーピングのプロセスで困難を感じている人は下記にあるような心理支援の専門家に相談することも役立ちます。


表2 コーピング・スタイルのいろいろ

<心理的適応の過程における適切なコーピング・スタイル>

  • やるべきことを実行していこうと事実を受け止める.
  • 必要以上に考えすぎないようにする.
  • ファイティング・スピリット(がんばるぞという思い).
  • ユーモア精神を発揮.
  • 情報を集める.
  • 人間の手の及ばない力もあると信じる.
  • 計画性をもつ.
  • 人生の糧として肯定的に受け止める.
  • 模範的患者として認めてもらおうと努力する.
  • 家族や友人の支援、福祉サービスを得ようとする.
  • 真摯に現実を直視し、受け止める

<心理的適応の過程における適切でないコーピング・スタイル>

  • 不安で頭がいっぱいになって他のことがまったく考えられない.
  • 恐怖心を治めるには闘うことしかないと信じ、医療者やまわりの人と口論したり衝突してでも過剰な医療やケアを要求するなどして、常に闘っている.
  • 事実を否認する.
  • 置き換え(自身のことを心配するよりも他の人のことばかり気にする).
  • 他人と距離を置く.
  • 事実に直面することから逃避する.
  • 否定的な運命を信じ込む.
  • 投影(自身の病気やリスクに対する怒りなどの嫌な気持ちを自ら直視せず、かわりにその感情を医療者や他の家族などに対してぶつける).
  • 自身の行動や感情を無理に正当化する.
  • 子どもっぽい行動、甘え、わがまま.
  • まわりをコントロールしようとする.

Schneider K : Counseling about Cancer - Strategies for Genetic Counseling,2nd Ed.,p.214 - 219, Wiley-Liss, New York, 2002(訳/改変:田村)

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