Cardiovascular Med-Surg Vol.2 No4 2000.11

血管の遺伝性疾患 マルファン症候群
京都大学循環病態学講座
青山 武

要約

マルファン症候群が最初に報告されて以来、約100年が経過した。1886年のフィブリリンタンパクの単離、90年代に入ってのFBN1遺伝子(Fibrillin1遺伝子)のクローニング、さらにFBN1での遺伝子変異の発見により、本疾患の病態が明らかになりつつある。これら、最近の知見をもとに、1996年にマルファン症候群の診断基準が改定された。一方、診断基準を満たさない症例においてもFBN1での遺伝子変異が確認されており、FBN1遺伝子異常に基づく症患群はマルファン症候群を含め、さらにその範囲は広い事が認識されつつある。マルファン症候群の予後を規定する大動脈瘤、特に、上行大動脈の拡張、解離に対する、Bentall術(大動脈基部置換手術)の導入以来、その予後は著明な改善を認めている。今後は、その病態からFBN1遺伝子異常が疑われる症例に対して、定期的な大動脈の検査、積極的な治療が望まれる。また、異常なフィブリリンタンパクの発現を抑制し、正常な microfibril を形成させることを目的とした遺伝子治療法の開発が待たれる。